営業部門の時間生産性を最大化する上で、最大のネックとなるのが「会議」だ。会議は、管理職が招集者である上に議長を兼ねるケースが多く、メンバーだけで会議のあり方を変えることは難しい。しかし、新型コロナウイルス禍において働き方や営業スタイルが大きく変化し、会議の見直しは必要に迫られている。(プレゼンス社長・田路和也)
会議の役割は、情報などの「共有」、アイデア・意見出しの「拡散」、意思決定の「収束」、ポジティブな感情を芽生えさせ、目標達成に向けてチームに一体感を生み出す「醸成」の4種類しかない。これらの中で、リアルに対面で会議を行う意義は、今や「醸成」にしか見いだせないと筆者は考えている。人間は、論理ではなく感情で動く。感情を動かし、組織内で高め合うことは、オンラインでは難しい。
部下に目標達成状況やプロジェクトの進捗(しんちょく)状況を報告させ、参加者に「共有」することを目的とした会議は多い。しかし、結果を「共有」するだけなら、上司と部下だけの二者面談で十分だし、むしろクラウド上で共有・管理するほうが合理的だ。会議で「共有」するのであれば、成功事例や、結果を生み出したプロセスを具体的に「共有」することが重要であり、参加者が再現性のあるノウハウとして持ち帰ることができなければ意味はない。
「拡散」についても、事前に議題を共有し、各自が洗い出してクラウド上で「共有」しておくほうが効率的だ。これはオンライン会議での代替も可能だし、むしろオンラインで実施したほうが、普段得にくい拠点の異なる参加者のアイデア・意見を取り入れ、多様性を担保することができる。
「収束」についても、決定者が事前にクラウド上で意思決定の結果とその理由を共有して、反対意見のある人がクラウド上にコメントを残し、反対者がいなければそのまま正式決定するというルールを組織内で共有しておけば、会議の時間短縮を図ることができる。大手企業の管理職クラスには終日会議をしているような人もいるが、必要最低限の会議だけで成果を上げられる組織を作り上げることが管理職の役割だ。
一方、コロナ禍にリモートワーク中心のワークスタイルになり、ランチタイムや喫煙タイムでのちょっとした会話や飲みニケーションの機会が奪われている。これらを通して生まれる人間的交流が、仕事に良い影響を与えていたことは否定できないだろう。意図的に「雑談」の場を設けることこそが、このコロナ禍には必要なことなのかもしれない。
【プロフィル】田路和也 とうじ・かずや 早大商卒。1998年パソナ入社、2000年人事測定研究所(現リクルートマネジメントソリューションズ)入社、07年プレゼンスを設立し現職。14年アポロ広告社と合併。営業部門の時間生産性向上に特化した研修・コンサルティングを提供。著書に『仕事ができる人の最高の時間術』(明日香出版社)、『HRプロファイリング』(日本経済新聞出版)がある。46歳。兵庫県出身。