第23回 相関と因果とビッグデータ…関係を見抜く
企業の売り上げ規模と従業員満足度には明確に関係がある。よって、経営者が売り上げを高めたいのなら、従業員満足度を高める施策が不可欠である。
経営コンサルタントからプレゼンで、こんなメッセージとともに次のようなグラフが示されたとしたら、みなさんはどのように判断するでしょうか。
このようなプレゼンによって実際に「従業員満足度を高める施策」を導入して、そのコストにより経営が傾いてしまった企業を私は知っています。今回のテーマは「相関関係と因果関係」です。
マーガリンの使用量と離婚率に因果関係?
次のデータは非常に有名なものです。マーガリンの使用量とアメリカのメイン州の離婚率のグラフを合わせたものです。
いかがでしょうか。ほぼ同じ傾向を示していますね。では、「離婚率を減らすために、マーガリンをスーパーからなくせばいい」となるでしょうか? それは効果がないことはみなさん理解できると思います。このように「同じ傾向を示す」ものを「相関関係」と言います。そこからさらに、「原因と結果の関係になっている」と言えるものを「因果関係」と言います。
先ほどの売り上げと従業員満足度の例で言えば「従業員満足度」と「売り上げ」には同じ傾向を示す「相関関係」はありました。しかし、「従業員満足度」が「売り上げ」を押し上げる「原因」にはなっていない、つまり「因果関係」はないので、「従業員満足度」を高めても「売り上げ」には影響しないということです。
このような認識の誤りには3つの原因があります。
- (1)たまたま同じ傾向があるだけ
- (2)原因と結果を逆にとらえている
- (3)他に原因となる要素がある
離婚率とマーガリンは(1)だと言えるでしょう。
売り上げと従業員満足度に関しては(2)です。「売り上げ」を高めれば、利益が出て、福利厚生の充実感や安心感によって「従業員満足度」が高まるということですね。
(3)については有名な例が「早起き」と「年収」です。年収が高いほど早起きの割合が多いという明らかな相関関係があります。
しかし「早起きをすると年収が高い」という因果関係も「年収が高いと早起きするようになる」という因果関係もありません。ここには「年齢」という別の要素があるのです。つまり年齢が高くなると年功制度により「年収」も高くなり、生理現象として「早起き」の傾向も強くなるということです。