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個人投資家向け国債低迷 14年度発行5000億円超減、低金利響く
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日銀の大規模緩和の影響で金利に低下圧力がかかる中、個人投資家向けの国債の発行が低迷している。2014年度の発行総額(今月16日現在)は、前年度比5000億円超も減った。個人向け国債以外で個人が購入できる「新型窓口販売」(新窓販)の国債も低金利で利回りがマイナスとなり、2年物は昨年10月から、5年物も今年1月分は、それぞれ募集を停止した。金利低下が続けば、国内個人投資家への国債販売を強化している財務省の思惑に反し、個人の国債保有割合がさらに減る恐れもある。
個人投資家が買える国債は、個人向け国債と新窓販国債の2種類ある。新窓販国債の表面利率は、直近の入札で発行された同年限の銘柄と同じになるため、「マイナス金利では需要が見込めない」として募集を停止している。これに対し、個人向け国債は金利の下限が0.05%に設定されているため、募集停止には至っていない。
ただ、個人向け国債の発行額は伸び悩んでいる。財務省は固定5年物と変動10年物について、個人の需要を取り込もうと、昨年1月から国債の発行回数をそれまでの3カ月ごとから毎月発行に増やした。だが現在募集中の適用利率(税引き前)は固定3年物と5年物で0.05%、変動10年物で0.2%で、「定期預金の金利優遇などのキャンペーンを強化しても販売額の増加につながらない」(国内銀行)。
物価上昇率に応じて元金が増える物価連動債(満期は10年)についても、今年1月から個人への販売が解禁された。だが、足元の物価上昇率が緩やかな上、「多くの投資家は10年後の物価を見通すのは難しい」(国内証券)ため、需要がほとんどない状況だ。
日銀の資金循環統計などによると、家計の国債保有割合は、ピーク時(08年12月末)の4.6%から1.9%まで低下する一方、民間金融機関が国債の6割を保有している。将来、日本の財政不安を背景に国債価格が急落(金利は急騰)すれば、銀行経営が不安定になり、経済を下押しする懸念がくすぶる。そのため、財務省は海外投資家や国内の個人向けの販売を強化し、国債保有の分散化を進めてきた。
日銀は物価上昇率目標の達成を目指しており、当面は大規模な金融緩和策が続くとみられる。足元では、16日の国債市場で長期金利の指標である新発10年債の終値利回りが、前週末比0.030%高い0.445%だった。金利低下が一段と進めば、財務省は国債の販売戦略の見直しを迫られる可能性もある。