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「Jカーブ効果は幻想」の声 貿易収支25カ月連続赤字

ニュースカテゴリ:政策・市況の国内

「Jカーブ効果は幻想」の声 貿易収支25カ月連続赤字

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 日本経済の牽引(けんいん)役として期待された輸出は7月も回復のペースに力強さを欠いた。2012年までの歴史的円高局面で製造業の海外生産移転が進み、円安になっても輸出が増えにくい構図になったためだ。新興国経済の停滞感が強まる中、輸出主導で景気が回復し、貿易収支も黒字に近づくという政府のシナリオは見直しを迫られている。

 7月の貿易収支では輸出数量が前年同月比0.9%増と3カ月ぶりに増加に転じた。ただ、伸び幅は依然小さく「回復の兆しが出たとは言い難い」(明治安田生命保険の小玉祐一チーフエコノミスト)との見方が市場では大勢を占める。

 政府は政権交代前後から急速に進んだ円安で昨年半ばから輸出が回復する青写真を描いてきた。円安は当初、原材料などの輸入品価格を直撃するが、半年から1年後に輸出の回復につながる「Jカーブ」効果が出ると踏んでいたからだ。だが、実際には輸出は伸び悩んだままで、市場では「Jカーブ効果は幻想」という言葉すら聞かれる始末だ。

 政府が輸出の動向を読み違えたのは、過去の円高局面で製造業が為替動向に業績を左右されにくいよう海外への生産移転を加速させたためだ。内閣府の調査では、円の対ドル相場が2割超安くなった12年末~13年末の局面でも、自動車の輸出数量は13万台減の467万台と減る一方、海外生産比率は3ポイント増の64%に上昇した。それだけ円安が進展しても輸出が増えにくくなったわけで、輸出主導で国内の生産や設備投資が持ち直し、雇用、賃金に波及する好循環がいつ実現するかは見通しにくくなっている。

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