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【専欄】中国でもセクハラ横行 拓殖大学名誉教授・藤村幸義

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【専欄】中国でもセクハラ横行 拓殖大学名誉教授・藤村幸義

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 中国語でセクハラのことを「性騒擾」と言うが、このセクハラ問題が中国でも大きな社会問題になりつつある。ところが法律が未整備なために、多くの女性は泣き寝入りせざるを得ないのが現状である。

 ある調査では約7割の女性が何らかの形でセクハラを受けた経験があるという。具体的には「卑猥(ひわい)な話を聞かされた」が54%、「身体を触られた」が27%、「のぞき見された」が8%などとなっている。セクハラの多い職業・身分としては観光ガイド、看護師、保母、秘書、キャビンアテンダント、芸人、学生、教員などが挙げられている。

 つい最近、厦門(アモイ)大学の博士課程の教員が、論文指導などでセクハラ問題を引き起こし、教員資格を停止されるという事件が起きた。ところが法律の専門家によると、博士課程の学生はすでに成人年齢を超えているので、大学の規定で罰せられても、民法・刑法など国の法律では罪にならないという。

 中国では2012年4月に「女性労働者の労働保護に関する特別規定」が交付され、この中で初めてセクハラに関する規定が設けられた。ところが第11条で「使用者は労働場所で、セクハラを予防し、制止しなければならない」と書かれているだけである。当時、中華全国総工会が「職場でのセクハラの予防・制止に関する細則を発表する計画だ」と明らかにしたが、その後細則が出たとの報道はない。

 セクハラ問題での最初の訴訟事件は早くも01年末に起きている。西安市の国有企業の女性職員が、上司からセクハラを受けたとして訴えたのだ。上司は「いいポストにつけてあげるから」などの甘い言葉をエサにして、この女性の身体に触ったりしたという。だが女性の出したセクハラ行為の証拠が不十分だとして、結局訴えは退けられている。

 最近はネットでの訴えが増えてきた。河南省のある女性は、公共交通の車内でセクハラを受けたとして、当局に抗議の書簡を送った。そして自分でデザインしたセクハラ防止のポスターを同封し、バスや地下鉄の車内に掲示するよう求めた。こうした一部始終はネットでも公開され、多くの国民が知るようになっている。

 まずはセクハラとは何か、範囲を明確にする必要がある。そしてどこに訴えればよいか、また罰則はどのようなものか。こうした細則を作成し、法律の不備を改めていかねばなるまい。

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