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地熱発電、新たな探査技術開発へ 開発費抑え「掘り当て」精度向上

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地熱発電、新たな探査技術開発へ 開発費抑え「掘り当て」精度向上

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日本で稼働中の地熱発電所  経済産業省が地熱発電の新たな探査技術の開発に乗り出すことが16日、分かった。石油や天然ガスの探査で地下構造の把握に使われている探査技術を地熱発電に応用する実証事業に近く着手し、5年後をめどに技術を確立させる。

 日本は世界3位の地熱資源を有するが、規制や多額の開発費用などが障害となって新設が進まず、総発電量に占める地熱発電の割合は1%にも満たない。新たな探査技術で開発費用を引き下げ、地熱発電の拡大に弾みをつける考えだ。

 「掘り当て」精度向上

 地熱発電所の建設にあたっては、事前に科学的な探査技術を使って地下の状態を把握。その後、実際に井戸を掘って発電に適した能力が本当にあるかなどを確認している。

 大規模な井戸を1本掘るには5億円程度の費用が掛かるが、発電に適した場所を掘り当てる確率は50%程度にとどまるとの推計もある。また失敗で試掘を重ねることが開発費用を膨らませているとの指摘があり、経産省はより高度な探査技術が必要と判断した。

 今回の実証事業では「地震探査」と呼ばれる探査技術を活用する。地震探査は、火薬などを使い人工的に振動を起こし、地中から跳ね返ってくる反射波を分析し地下の構造を把握する手法で、石油・天然ガスの探査では主流となっている。地熱発電の地下探査で一般的な「電磁探査」という地下の電流や磁場を測定する探査技術より、地下構造を正確に把握できると期待される。両手法を組み合わせることで探査精度の向上を目指す。

 国が石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)に交付金を支給しJOGMECが民間企業などに事業委託する。JOGMECは今秋にも委託先を公募で決める。同時に安定的な発電を維持する技術開発を行う実証事業に乗り出す予定で、予算は両事業あわせて今年度約5億円。

 国挙げ新設を推進

 地熱発電は、気象状況によって発電量が変わる太陽光や風力と異なり、年間を通じて安定的に発電できる。

 ただ、調査費用も含めて総額約260億円(出力3万キロワット)とされる建設費用に加え、発電に必要な地熱が得られる地域が国立・国定公園に集中。このため開発が制限され1999年稼働の東京電力八丈島地熱発電所(東京都八丈町)を最後に新設は途絶えている。

 だが、政府は東日本大震災を契機に、地熱発電の潜在力に着目。環境省は昨年3月、国立・国定公園内での地熱発電所の開発を条件付きで認める規制緩和を行い、新設計画が一部で動きだした。経産省も温泉地や地方公共団体向に対し地熱を活用した地域振興事業などへの補助事業を開始。今年度の支援総額は28億円で、経産省は「地熱発電への理解を深めてもらい、地熱資源の有効活用を進めていきたい」と強調する。

 【用語解説】地熱発電 地下にたまっているマグマの熱で加熱された高温・高圧の蒸気を取り出し、それを使ってタービンを回して発電する。再生可能エネルギーの一種で、発電時の二酸化炭素(CO2)排出量はほぼゼロ。経産省資源エネルギー庁によると、日本の地熱資源量は約2350万キロワットで、米国、インドネシアに次ぐ世界3位。現在、全国で稼働中の地熱発電所は東北や九州を中心に17カ所で、合計出力は約52万キロワットと、資源量の約2%しか使われていない。

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