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エボラ接触者乗せ放浪航海 寄港拒否相次ぐ 失態続く米CDCに批判
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米国務省は17日、テキサス州ダラスの病院でエボラ出血熱により死亡したリベリア人男性の血液などのサンプルに触れた可能性のある女性職員が、カリブ海クルーズ船に乗って旅行中であることを公表した。女性に発熱などの症状は出ていないが、周辺の国が相次いでクルーズ船の寄港を拒否。船は放浪を余儀なくされる事態になっている。一方、米疾病対策センター(CDC)は17日、この病院で2人目のエボラ熱の陽性反応者となり、隔離治療を受けている女性看護師がエボラ熱に感染していることを正式に確認した。米国内では、封じ込めを指揮してきたCDCの制御不能状態を批判する声が強まっている。
米CNNなどによると、寄港を拒否されたのは世界最大のクルーズ船運航会社「カーニバル・コーポレーション」(本社・米マイアミ)のカーニバル・マジック号(総トン数・12万8048トン、定員約5000人)。
■健康状態は良好
女性職員は検査部門の責任者で、死亡した男性のサンプルを9月下旬に扱った。経過観察の対象になっている治療にかかわった病院のスタッフ76人の1人だったが、今月12日にテキサス州ガルベストンからクルーズ船に乗り込んだ。17日の時点で、サンプルを扱った可能性のある日から19日が経過したが、症状は出ていない。女性は同行者とともに客室から出ずに過ごしており、健康状態は良好だという。
エボラ熱に感染してから発症するまでの潜伏期間は最長で21日とされ、まだ発症の可能性が残っているため、事態を重視した国務省はこの女性をカリブ海に面した中米ベリーズに上陸させ、空路米国へ搬送する方針を決定。ジョン・ケリー米国務長官(70)がベリーズのディーン・バロー首相(63)に寄港を認めるよう電話で直接依頼したが、バロー首相は「国民の健康を脅威にさらすわけにはいかない」と拒否した。
さらにマジック号は17日にメキシコ・ユカタン半島沖のコスメル島に寄港し、乗客は下船して1日過ごすことになっていたが、メキシコ政府も寄港を拒否。マジック号はしばらく沖合に停泊したが、結局、寄港を断念し、予定を変更して19日にガルベストンに帰港することになった。
■搭乗容認を問題視
一方、米国内での2人目の感染者となった同じ病院に勤務する女性看護師は、10~13日にテキサス州から中西部オハイオ州に航空機で旅行していたため、乗り合わせた乗客約800人が保健当局による健康監視の対象になり、騒ぎになっている。社会不安が高まっているのを受け、バラク・オバマ米大統領(53)は18日、週末恒例のビデオ演説で「(感染者の体液に接触して感染する)エボラ出血熱は(感染者と)バスや飛行機で乗り合わせただけでは感染しない」と述べ、国民に落ち着いた対応を呼び掛けた。
防護態勢は万全とみられていた米国で起きた、制御不能ともいえる混乱。米メディアは、旅行先のオハイオ州で微熱が出た2人目の看護師に、航空機への搭乗を認めたCDC関係者の判断を強く問題視している。
また、問題の出発点となったダラスの病院は、死亡した男性を最初に誤診したことやスタッフの危機意識の低さが批判にさらされている。900床のベッドを備えた大病院だが、米メディアによると、手術や診療予約の取り消しが相次いでいるという。