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イノダコーヒ、圧倒的な強さの秘密 スタバなど出店攻勢にも動じない存在感

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イノダコーヒ、圧倒的な強さの秘密 スタバなど出店攻勢にも動じない存在感

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モーニングのセット「京の朝食」(午前11時まで)は、観光客にホテル並みの朝食を提供し、ゆっくり京都を楽しんでもらいたいとの思いがこもっている  【京都うまいものめぐり】

 ≪ミルク、砂糖を入れて供する≫

 砂糖とミルクが入った状態でコーヒーを提供するユニークなスタイルで知られ「京都の朝はイノダに行かないと始まらない」と言われるほど地元で圧倒的に支持される老舗喫茶店チェーンがイノダコーヒだ。噂を聞きつけ、休日には観光客が列を作るなど、いまや京都を代表する観光スポットでもある。

 1947年にコーヒー店を始めて以来、着実に地盤を固め、スターバックスコーヒーやタリーズコーヒーといった欧米スタイルのカフェの出店攻勢にも全く動じない圧倒的な強さと存在感を発揮している。その強さの秘密にも迫ってみた。

 京都市営地下鉄の烏丸御池(からすまおいけ)駅から東に徒歩5分。週末は観光客でにぎわう堺町通沿いにイノダコーヒ本店がある。外観はレトロなたたずまいの町家だが、中はシックなサロン風の作り。

 全205席の広々した空間は開店直後から地元の常連さんたちで大にぎわいだ。4月のお花見シーズンは1日約1000人が訪れるという。

 冷めては混ざりにくい

 現在は一般的な喫茶店と同様、自分でミルクと砂糖を入れるスタイルも選べるが、最初からミルクと砂糖が入った形で提供するという珍しいスタイルが生まれたのはなぜか。

 業務部の国本信夫業務課長(48)は「うちも当初はコーヒーはブラックの状態で、ミルクと砂糖を横に添えてお出ししていたんですが、当時はコーヒーも貴重品で、みなさん長時間かけて楽しまれたため、冷めてから砂糖やミルクを入れる方が多かった。それでは、うまく混ざらずおいしくないので、最初からベストの状態でお出しすることにしたんです」と説明する。

 早速、創業以来の看板メニュー「アラビアの真珠(ホットコーヒー)」をいただいた。モカをベースに独自の欧州風深焙(あぶ)りブレンドを採用した逸品だが、香りやコク、酸味が絶妙に融合した深い味わいに心が安らぐ。

 新勢力台頭も動じず

 「おいしいものをおいしい状態でお出しすることと、食材は絶対ケチらず高品質のものを使うことを徹底している」(国本さん)だけあって、全6種類のコーヒーも、コストはかかるが1種類あたり5、6種類の豆を独自ブレンド。無論、看板の「京の朝食」など食事類の質にもこだわり抜いている。

 ウエーターやウエートレスはホールだけで約20人。さらに男性も女性も全員ちょうネクタイを着用するなど正装で接客に臨む。国本さんは「ホテルに負けないきめ細やかで自然体の接客サービスもうちの強みです」と胸を張る。機敏に動き回る彼らの接客には無駄がなく心地よい。

 1995年10月にスターバックスコーヒージャパンが設立されて以来、日本でも米国スタイルのスタバやタリーズが猛烈な勢いで店舗網を広げ、旧来型の街の喫茶店を駆逐したが、全く動じなかった。強さの秘訣は-。

 「社内でも対策の必要性を訴える声は出ましたが、結局、全く異なる業態であり追随の必要なしとの結論に至りました。向こうはセルフサービスでうちはフルサービス。主要顧客層もかぶらない。それなら接客サービスのさらなる強化で乗り切れる」(国本さん)

 徹底した地域密着

 さらに「むしろ若い世代にコーヒーを楽しむ習慣を広めてくれる存在だと歓迎することにしました。彼らが年齢を重ねれば、ゆったりできるうちのような店の主要顧客になってくれますからね」と発想を変えた。

 そしてもうひとつ。徹底した地域密着の経営姿勢も強さの秘密だ。「この本店、2000年に建て替えたんですが、当初、事務所機能を含むビルにする計画だったんです。ところが常連さんたちが『近代的な喫茶店なんかアカン!』と猛反対。計画を白紙に戻し、今の町家形態に変更したんです」と笑う。

 2000年からは全国展開も加速化。東京都、札幌市、横浜市など5都市に7店舗を開業した。「各地で地域密着を強めたい」と国本さん。顧客愛と地元愛重視のビジネスに不況は関係ないようだ。(文:岡田敏一/撮影:恵守乾/SANKEI EXPRESS

 ■イノダコーヒ本店 京都市中京区堺町通三条下ル道祐町140番地、(電)075・221・0507。代表的なメニューは、看板コーヒー「アラビアの真珠」が500円。「京の朝食」が1200円。ビーフカツサンドは1730円。フレンチトーストが530円。イタリアンが800円。あんみつ豆が660円。ケーキセットが880円。営業時間は午前7時~午後8時。無休。京都市内には本店のほか、5支店がある。

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