【IT風土記】栃木発 味は絶品、高級・完熟イチゴを海外に 新たな市場を広げる自動収穫ロボットの可能性
更新イチゴ生産量日本一を誇る栃木県にある宇都宮大学で、イチゴを収穫から店頭に並ぶまで果肉に一切触れずに出荷するロボットの開発が進められている。人工知能で制御されたロボットが完熟度合いを見極め、実のついたつる枝をつまんでイチゴを収穫。果肉が接触しないよう工夫された容器に一つずつ収納して出荷する。完熟状態でも10日以上傷むことがない。高級品種「スカイベリー」をこの方法で出荷することで、海外の富裕層向けの市場拡大を狙っている。
「いちご王国」を悩ます輸出の壁
栃木県は1968年からイチゴ収穫量日本一を維持し続けている。年間の収穫量は約2万5000トンで、全国の約15%を占めている。「東京をはじめとする大消費地に近いという地理的なメリットに加え、「冬の日照量が長く、昼夜の寒暖差が大きいなどの気候条件が、おいしいイチゴを育てている」と、栃木県農政部経済流通課の後藤知昭副主幹は解説する。
「いちご王国」を自負する栃木県だが、トップに立てない分野がある。それが輸出だ。「東日本大震災による原発事故の影響から栃木県はいまだに台湾や香港への農産物の輸出が禁止されている」(後藤副主幹)ためだ。15年の全国の輸出量が408トンだったが、栃木県の16年の輸出実績はわずか444キロ。17年は約2倍の1トンの輸出を目指しているが、厳しい戦いを強いられている。
栃木県は風評被害がない東南アジアをターゲットにマレーシアやシンガポールの有名レストラン10店舗で試食会を開催するなどPR活動を展開。県が高級品種「スカイベリー」を投入し、輸出拡大を目指している。スカイベリーは1粒約25グラム以上と大粒ながら、イチゴらしい円錐形を保ち、糖度と酸味のバランスがいい。福岡県の「あまおう」や佐賀県の「さがほのか」といった県外の高級品種に対抗できる栃木県期待のブランドだ。