ニュースカテゴリ:企業サービス
ヤマトと佐川、法人宅配強化 ネット通販拡大、高付加価値で勝負
更新
法人向けの宅配便市場をめぐり、大手2強のシェア争いが激化している。首位のヤマト運輸を傘下に持つヤマトホールディングス(HD)は、グループの機能を結集した物流ターミナル「羽田クロノゲート」(東京都大田区)を拠点に、高付加価値のサービスを拡充した。これに対し、2位の佐川急便を擁するSGホールディングス(SGH)は、法人向けに経営資源を集中してきた強みを生かし、きめ細やかな対抗策を打ち出した。両社とも、インターネット通販の普及で市場が拡大する中、法人向けの単価下落への対応を迫られている。
ヤマトグループで国際間物流を担うヤマトグローバルロジスティクスジャパンは4月から、中国の物流最大手の中国郵政集団(チャイナポスト)と提携し、日本のネット通販会社で買い物をした中国人向けに商品を宅配するサービスを始めた。ヤマト運輸の宅配便サービス「宅急便」ネットワークを利用して日本企業から集荷し、羽田クロノゲート経由で中国に空輸。受け取ったチャイナポストが中国全土に宅配する仕組みだ。
中国には、Eコマース(電子商取引)で海外の物品を購入する利用者は約3億4000万人に上り、ヤマトHDは「今後は現地法人をつくらなくても、中国の市場にアプローチができる」と、ネット通販向けのメリットを強調する。羽田クロノゲートまでの輸送で、通販業者の宅急便の活用につながりそうだ。
同社の木川真社長は、業界トップの「toC(個人向け)」だけでなく「『Bto(法人から出荷される荷物)』でも圧倒的な強みを持つ総合物流企業になる」と意気込む。戦略の成否の鍵を握るのが、2013年9月に竣工(しゅんこう)した羽田クロノゲートだ。最新機器と羽田空港に近い立地を生かし24時間365日の稼働を可能にした。国内外から納品される製品・部品などを納品先ごとにまとめて出荷することや複数の国で製造された製品・部品を羽田クロノゲート内で輸入通関し、組み立てを行うことなどで取引先企業の生産性を向上させる。13年4~12月期の宅配便取扱個数は、個人向けなどリテールが前年同期比3.8%増に対し、法人向けは22.3%増と好調だ。
一方、SGHも法人向けサービスを強化している。昨年12月からは、リコール(回収・無償修理)発生時の返品・回収事業のサービスで、消費者が通販業者のホームページにある返品受付用のURLから簡単に申し込みができるシステムを採用した。24時間の電話受付サービスの対象地域を拡大するなどして、東京から大阪までの当日配送も実施している。
両社が法人向けの高付加価値サービスを充実するのは、市場動向への対応を迫られているからだ。12年度の国内の宅配便市場は前年度比3.7%増の35億2600万個で、ネット通販の拡大が牽引(けんいん)している。ただ、ネット通販は小口商品が主流で配送単価が低く、取り扱いが増えても大幅な収益向上は望めない。消費税増税で大口取引先からの値下げ圧力もある。
SGHは、主に法人顧客向けの運賃を下げてシェアを伸ばしてきたが、12年末から戦略を転換。運賃の適正化を顧客と交渉するなどして収益構造の改善を進めてきた。その結果、13年度上期(4~9月期)の取扱個数は前年同期比11.3%減と減少したのに対し、1個当たりの単価は22円増の481円となった。
ヤマトHDも今年に入り、一部の法人顧客に対して適正な運賃水準について交渉している。両社とも、法人顧客のニーズにきめ細かく対応する姿勢を打ち出しており、どこまで顧客満足度を高められるかが、勝敗を分ける決め手となる。(鈴木正行)