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ニート就業支援に広がり 年内にも全員がニートで取締役の会社設立
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職に就かないニート(若年無業者)の起業・就業への挑戦を支援する動きが広がってきた。「コミュニケーションが不得手で引きこもりがち」のイメージの強いニートだが、潜在的な可能性を引き出すことができれば新しいビジネスの種が生まれるかもしれない。
全員がニートで取締役という会社「NEET株式会社(仮称)」が、早ければ年内にも設立される。NPO法人(特定非営利活動法人)「中小企業共和国」(東京都新宿区)の支援を受けたもので現在、新会社の事業内容を決める作業中だ。
「ニートの人たちが利用できるシェアハウス(共同利用の賃貸住宅)をやってみたい」「世界中のニートを特派員として契約し、各地の情報をインターネットで発信してはどうか」
9月10日、東京都内の会議室に約100人の若者が集まり、各自が持ち寄ったビジネスプランを披露した。
通信制大学に通う、さいたま市在住の赤坂唯さん(25)は「ニートといってもその理由は人によってさまざまだ。新会社でそうした多様性を広く訴えたい」と、新しいビジネスプランをまとめたポータル(玄関)サイトを提案した。自由な討論の中から、新会社の主力事業を決めていく。現在約200人が新会社への参加登録をしているという。
この事業を企画・プロデュースした若新雄純氏は「参加者がじっくり考えて議論できる雰囲気を心がけている」と話す。
新会社は登記上の本社を都内に置く予定だが、事務所は持たず、各自がネットを駆使して仕事に取り組む予定だ。
ニート(neet)は、英国で使われた「not in education,employment or training」の略語。日本では15~34歳の非労働人口のうち、通学や家事を行っていない者と定義される。
厚生労働省は2004年の「労働経済白書」で、ニートに当たる存在を「若年無業者」として具体的な人数を明らかにした。
ニートの社会問題化に伴い、厚労省は宿泊施設にニートを集め、集団生活や農作業などのインターンシップ(職業体験)を通じて勤労意欲を培う「若者自立塾」事業を実施。各地のNPO法人による相談業務も行われてきた。
しかし、ニートの人数は02年以降、全国で60万人台で推移するなど、効果的な対策を見いだせないのが現状だ。
文部科学省によると、今春大学を卒業した人のうち、派遣社員やアルバイトといった不安定な雇用状況にある人の割合は20.7%。大卒新規就職者のうち3年以内に雇用先を辞める人は3割程度いるとされ、再就職できない人も多いなど、若年雇用問題の難しさを浮き彫りにしている。
これに対し、若新氏は「若者が働く意味や価値を見いだせなくなっている」と語る。「収入より夢や仲間、仕事から得られる充実感があればいい」というのが、仕事に対するニートの価値感だというのだ。
実際、NEET株式会社への登録者には、専門的な特技や資格を持つ人も多い。ウェブデザイナーのようなインターネット関連の技能、国際コミュニケーション英語能力テスト「TOEIC(トーイック)」の満点(990点)所持者、司法書士、会計士、小型船舶1級など人材は豊富だ。
大阪府は11年から、ニートの中でも働く意思のある人を「レイブル」と位置づけ、就労活動支援に乗り出している。
「大阪レイブル超就活」と称したこのプロジェクトは、大阪府内の10社と連携。1カ月間のインターンシップを経て就労を支援する取り組みだ。12年度は134人が参加し、このうち33人が就職した。大阪府は就職できなかった人に対しても他の支援サービスを紹介するなど、就職支援を続ける。厚労省所管のハローワークは、ニート支援に携わってきた民間事業者のノウハウの活用を検討中だ。
アベノミクス効果で企業の採用意欲の高まりが予想される中、“脱ニート”の動きが活発化しそうだ。