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ソーシャルゲーム斜陽、2強巻き返しなるか パズドラの次を模索

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ソーシャルゲーム斜陽、2強巻き返しなるか パズドラの次を模索

更新

新興ゲーム3社の連結営業利益  スマートフォン(高機能携帯電話)の急速な普及を背景に、携帯電話向けゲームの勢力図に地殻変動が起きている。ガンホー・オンライン・エンターテイメントがスマホ専用のゲームアプリ(応用ソフト)「パズル&ドラゴンズ(パズドラ)」の大ヒットで躍進する一方、従来型携帯電話向けで伸びてきたソーシャルゲーム大手のグリーとディー・エヌ・エー(DeNA)はかつての勢いを失い、主役の座から転げ落ちた。

 ソーシャルゲーム2強はスマホへの対応を強化しているものの、巻き返しに向けた新作ゲームがファンをとりこにできるかは未知数だ。

 「ここでしか聞けない『探検ドリランド』制作ウラ話! 開発スタッフが制作秘話を語る」

 19日に千葉市で開幕する世界最大級の家庭用ゲーム見本市「東京ゲームショウ2013」で、グリーは「探検ドリランド」や「釣りスタ」など主力ゲームでは初めてファン向けのイベントを開く。開発者との交流でユーザーをつなぎ止めようというのが狙いだ。ホームページのうたい文句でもファン心理をくすぐり、イベントへの参加を希望する多数の応募者を集めた。

 ソーシャル斜陽

 もっとも、1年ほど前は飛ぶ鳥を落とす勢いだったグリーの業績は下降ラインをたどり、連結営業利益は減少に歯止めが掛からない。2013年4~6月期の連結決算では、不採算ゲームの開発・運営の取りやめや海外拠点の閉鎖で102億円の特別損失を計上し、3億円の最終赤字に陥った。四半期ベースでの赤字は08年の上場以来初めてで、13年6月期の年間配当も初の減配を余儀なくされた。

 「従来型携帯電話向けの収益が急速に下がる一方、スマホ向けを伸ばしきれなかった」。田中良和社長はこう説明する。

 スマホへの対応が遅れたのは、DeNAも同じだ。13年4~6月期の連結営業利益は前年同期比7.6%減の169億円にとどまった。スマホ中心に展開している欧米向けのゲーム事業は6月に単月で初の黒字化を達成したものの、新規のヒット作に恵まれなかった国内事業が足を引っ張る格好となった。

 これに対し、ガンホーの業績は目を見張る急伸ぶりを遂げている。13年4~6月期の連結売上高は前年同期比11倍強の437億円、連結営業利益は34倍強の265億円と絶好調だ。

 スマホが想定以上のスピードで浸透するとともに、ゲームに疎遠だった若い女性などがゲームアプリをスマホに取り込んで楽しむようになり、代表格のパズドラの人気が沸騰。電車での移動中などに「スナック菓子感覚」(ガンホーの森下一喜社長)で楽しめる点が受け、サービス開始から1年半でダウンロード数は1800万を突破した。

 もともとグリーとDeNAの2社は、交流サイト(SNS)などを手がけるインターネットサービス会社。自社のプラットホーム(配信基盤)上に他社製も含めさまざまなゲームを集めて利用者に回遊を促し、ゲームに登場するアイテム(道具)に課金する独自のビジネスモデルで収益を生み出してきた。

 しかし、ゲームアプリの台頭とともにソーシャルゲームの存在感は相対的に低くなっている。

 ヒット期し新作攻勢

 グリーとDeNAはゲームアプリに軸足を移すことで、巻き返しを急ぐ。DeNAは7月から14年3月までに、国内だけで約60本のゲームを新たに投入する計画を打ち出した。8本にとどまった前年同期を大幅に上回る新作攻勢で「ヒット作を生み出すことを約束したい」と、守安功社長は自信をみせる。

 質向上に注力「面白ければ選ばれる」

 DeNAは新しい開発パートナーと組んで新たなジャンルに踏み込んだり、特色あるゲームを生み出すため小人数の開発チームを導入。複数の試作品のうちヒットが見込めるものだけ制作を進める手法を取り入れるなど、質の向上にも余念がない。

 一方、グリーは「開発数を絞り込んで一つ一つを伸ばしつつ『選択と集中』でコストを抑える」(田中社長)。年内に25本の新作を投入する計画という。

 鍵を握るのが、ゲームアプリの統括事業部長を務める荒木英二氏だ。荒木氏は北米でヒット作を効率良く生み出した実績を持つ。開発期間が長くなるアプリゲームを成功に導くハードルは高いが、社内の期待は大きい。

 東京ゲームショウでグリーが掲げるテーマは「ソーシャルだからおもしろい!」。ゲームアプリに力を注ぎつつ、ソーシャルゲームの復権も狙う戦略は功を奏するか。

 「従来型携帯とスマホ向けのいずれでも面白ければユーザーに選ばれる」(ゲームアナリスト)だけに、全ては作品の質にかかる。(米沢文)

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