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ドコモのiPhoneは毒か薬か… サムスン激怒?「土管化」のリスクも
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ソフトバンクの「iPhone5」 ドコモにとって「アイフォーン」発売はまさにもろ刃の剣だ。人気スマホを取りそろえることで番号持ち運び制度(MNP)による他社への転出を止め、ソフトバンクやKDDIに水を開けられた純増数でも巻き返しが期待できる。
しかしアップルがアプリ(実行ソフト)やコンテンツサービスの収益を握るアイフォーンを売るということは、ドコモが開発してきた独自サービスを使わない顧客を増殖させることになる。
ドコモは「このままでは通信事業者は土管化する」(山田隆持前社長)という危機感から、幅広い分野のコンテンツを集め新規事業を開拓してきたが、これらの資産を生かせない市場を作ることになるわけだ。
「アイフォーンはドコモにとって、毒にも薬にもなる」(市場調査会社)。契約数巻き返しの特効薬となりそうな半面、回避してきたはずの「土管化」を助長する“毒薬”にもなりかねないからだ。
ドコモはもちろん、アイフォーンが毒薬にならないための布石を打ってきた。
独自サービスを使える主力機種をアイフォーンと双璧に育成するための「ツートップ」戦略であり、他社の顧客向けにも独自サービスを開放し収益基盤を拡大する取り組みだ。しかし、これらの準備はまだ緒に就いたばかり。
調査会社などの推計によるとアイフォーンの2012年度の国内販売台数は1060万台。ソフトバンクが50%強、KDDIが50%弱でほぼ拮抗(きっこう)している。そこにドコモが参入して500万台前後の販売を目指す。
夏商戦で最も売れたソニーの「エクスペリアA(エース)」は約3カ月で130万台。
単純計算すればほぼ同じ販売台数だが、アイフォーンが予想外に売れると、独自サービスを担うスマホの存在感は薄れてしまう。
ドコモのアイフォーン販売戦略は今月中旬にも発表される見通しだが、現行モデル「5」の後継機種「5S」だけに絞り、廉価モデル「5C」は扱わない可能性もある。
ドコモと蜜月関係にあった韓国サムスン電子はアイフォーン発売の情報に憤慨したと伝えられる。
10月中旬に発表される見通しの冬商戦用の新型スマホの品ぞろえに影響が出る可能性もある。スマホ市場は波乱含みとなってきた。(芳賀由明)