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電機大手どうなる「通信簿」 脱デジタル家電で明暗

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電機大手どうなる「通信簿」 脱デジタル家電で明暗

更新

 ソニーに円安株高効果/パナソニックは構造改革カギ

 日本の輸出産業を担う電機業界で、今週から来週にかけて企業の「通信簿」である平成25年3月期の連結決算発表が本格化する。

 安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」に伴う円安の追い風が吹く中、下請け企業を多く抱え裾野が広い電機業界の業績が上向かなければ、所得増を通じた景気回復もおぼつかない。企業トップらが決算発表の場でどのような成長戦略を打ち出すかに注目が集まる。(大柳聡庸)

 リストラ効果じわり

 作ってももうからない事業からの転換-。その過渡期にあるのが、携帯電話や液晶テレビなどのデジタル家電を収益の柱としてきたパナソニックやシャープ、ソニーの3社だ。

 デジタル家電は技術的な差別化が難しく、中国や韓国など後発メーカーとの低価格競争が激化。3社は、人員削減や過剰な生産設備を整理するなどして利益を捻出している。

 パナソニックは、兵庫県尼崎市にある最新鋭のテレビパネル工場の生産を停止した。リストラ関連費用も膨らみ、2年連続で7千億円を超える最終赤字を計上する見込みだ。

 同社の津賀一宏社長は「デジタル家電への依存から脱却する」と述べ、ビジネスモデルの転換を強調。自動車向けの部品や住宅設備など、企業向けビジネスに重点を移す。全社的な事業改革の道筋をどうつけるかがポイントだ。

 液晶テレビの不振で2年連続で過去最悪の最終赤字を計上するシャープは、自社の液晶テレビ販売を縮小したほか、昨年12月に2960人が希望退職した。「人件費など固定費の削減が寄与」(同社の大西徹夫専務)し、営業損益は下期(24年10月~25年3月期)に限れば、黒字に転換したもようだ。

 ソニーも、米国本社や東京都品川区のオフィスビルなどの資産を相次ぎ売却した。同社は25日、25年3月期連結決算の見通しについて、最終損益を従来の会社予想の2倍に当たる400億円の黒字になると上方修正した。

 円安が収益を押し上げたほか、株高でグループのソニー生命保険の運用益が改善されたからだ。

 対ドルで1円の円安に振れた場合、営業利益がいくら増えるかを示す為替感応度は、大手電機メーカーで最大数十億円程度とみられ、ソニー以外にも波及が期待される。

 「企業向け」堅調

 一方、液晶テレビなど不採算のデジタル家電をいち早く縮小し、鉄道や発電といった社会インフラ事業に経営資源を集中した日立製作所と東芝、三菱電機の3社は業績が堅調だ。

 中国向け販売が鈍化しているものの、日立製作所と東芝は営業増益を確保し、最終利益の見通しは1千億円を超える。三菱電機は防衛省などへの過大請求問題で多額の返納金を納めるため減益を余儀なくされるが、企業向けビジネスに強く、高い利益水準を維持しそうだ。

 IT(情報技術)を得意とする富士通とNECの2社の25年3月期連結決算は、構造改革のスピードの差が明暗を分けそうだ。

 NECが26日に発表した決算は、大幅な営業増益となった。不振の半導体を切り離すなど不採算事業のリストラを急いだほか、スマホの普及に伴う基地局向け機器の需要に対応したことが寄与した。

 富士通は半導体事業の再編に伴うリストラ関連費用が膨らみ、25年3月期予想では最終赤字に転落する。

 電機業界の本格回復には何が必要か。SMBC日興証券の白石幸毅シニアアナリストは「業績回復がリストラや円安効果が中心では厳しい。円高是正といった追い風があるうちに、事業構造を見直すことが重要だ」と指摘している。

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