SankeiBiz ニュース詳細(ライト版)

PC版

米菓業界、国産原料高騰に悲鳴 外国産に切り替え、やむなく値上げも

2012.9.25 05:00更新

手焼きせんべいを売る東京巣鴨のせんべい店「雷神堂巣鴨本店」の平野満夫店長。「原料はすべて国産が売りだから、国産米の価格高騰は頭の痛い問題」と話す=東京都豊島区

 国産加工米価格の高止まりの影響を受け、せんべいや団子などを手がける米菓業界が苦境に立たされている。老舗菓子店や大手米菓メーカーでは、原料を安価な外国産米に切り替えたり、やむなく値上げに踏み切る店舗も現れ始めた。だが、嗜好(しこう)品である米菓は、値上げや産地変更により客離れにつながる可能性もある。原材料価格の高騰は当面続く見通しで、各店は対応に苦慮している。

 利益確保に四苦八苦

 「値上げはしたくなかったが、利益確保のためには仕方ない判断だった。お客さまには何とか理解してもらいたい」

 北海道小樽市に本店を置く創業1895(明治28)年の老舗和菓子店「小樽新倉屋」は8月、看板商品の「花園だんご」を1本84円から95円に引き上げた。使用している原材料は国産米粉100%で、国産加工米の価格高騰が値上げの理由だった。「国産にこだわった素材が商品の売りだけに、素材を変更することもできず、やむを得なかった」と唇をかみしめる。

 「日本一のしょうゆの街」として知られ、せんべいを観光資源とする千葉県野田市でも複数の老舗せんべい屋が値上げに踏み切った。同市の老舗せんべい店「米澤屋」は5月にしょうゆ味の「野田せんべい」を53円から58円に値上げ。ほかの一部の商品も5円の値上げに踏み切った「原材料だけでなく、包装用の袋の材料費も高くなったことが影響した」とうなだれる。

 米菓の国内最大産地である新潟県の米菓メーカーにとっても深刻な問題となっている。

 最大手の亀田製菓は主力商品である洋風せんべい「ハッピーターン」など一部商品にミニマム・アクセス(MA)米などの輸入米を使用し始めた。また、岩塚製菓もせんべい「あずま焼き」に米国産のうるち米を使うなど、国産よりも安価な材料に切り替える動きが目立ってきた。「もとが安い商品なので、値上げするとインパクトが大きい。消費者の買い控えも懸念されるので、原料高騰分を販売価格に転嫁するのは難しい」(亀田製菓)と話す。

 飼料用に転作増加

 全国米菓工業組合などによると、米菓の主原料である加工用米の2012年産(精米)の価格は昨年より60円高い1キロ220円と、約4割も跳ね上がった。加工米の中で品質が良い米を、外食店などが低価格な主食用として使うケースが増えていることや、全国農業協同組合連合会(JA全農)の加工米の集荷量が減少したことなどで、加工米から飼料用米に転作する農家が増えたことが価格高騰の原因という。

 また、コメの流通経路の透明化を目指す米トレーサビリティー法が昨年7月から全面施行され、あられやせんべいなどの米菓商品にも原料米の産地表示が義務づけられたことも影響している。ある業界関係者は「表示義務がないことをいいことにこれまで外国産の加工米を使用していた業者も、イメージのよい国産米に切り替え始めた」と指摘。「安価な国産加工米を買い求める業者が増え、需要過多になりつつある」と話す。

 国産加工米の価格高騰は今後も続くと予想され、ある米菓メーカーは「大きな天候不順などで全国的に米が不作になれば加工米価格はさらに上がる。利益確保は困難を極めるだろう」と危機感を抱いている。

  • シェア