政府の観光支援事業「Go To トラベル」を利用した宿泊商品の1人当たりの単価は1万円未満が6割だったとする観光庁のデータが波紋を広げている。野党側は、割引額が大きい高級宿に利用が集中しているのではないかと国の制度設計を批判してきたからだ。果たして実態はどうか。旅行代理店を取材すると、意外な結果がみえてきた。
観光庁が示したのは、旅行会社などが手配した8月分を集計した数字。14日に野党が開いた会合で示した。
内訳は1万円未満が64.1%▽1万円以上1万5000円未満が13.1%▽1万5000円以上2万円未満が9.1%▽2万円以上2万5000円未満が5.4%▽2万5000円以上3万円未満が3.4%▽3万円以上が4.9%。観光庁は「1万5000円未満の利用が8割近くを占めている」として低い価格帯の利用が大半だと指摘する。
これに対し、ある旅行代理店の担当者は「8月は例年、海外旅行に出かけるお客さんが多いが、今年は新型コロナウイルス感染症の影響で行けなくなった。その分、国内旅行で普段より高い宿や部屋に泊まる傾向はあった」と分析する。
別の旅行代理店の担当者も「いつもそのお客さまが利用されるクラスのワンランク上のホテルを予約されているとの印象を受ける」と話した。ただ、8月は東京発着の旅行が除外されていた期間でもあり、自家用車で1、2時間圏内を観光するマイクロツーリズムが各地で定着し始めた時期に当たる。
「『近場』『高級宿』『マイカーでの旅行』がトレンドだった」とこの担当者が話すように、近場の宿が好まれたことが客単価の上昇を抑える要因につながった可能性はある。また、トラベル事業を出張で使う利用者もおり、全体の客単価を引き下げたとの見方も出ている。
トラベル事業は国内の宿泊、日帰りツアー代金の50%相当を補助するもので、上限は1人1泊当たり2万円。旅行代金全体の35%分が代金から割り引かれ、15%分は地域共通クーポンとして配られる。クーポンは旅行を予約・購入した旅行会社などから配布され、旅行先や隣接する都道府県で旅行期間中に限り利用できる。(岡田美月)