テレビCMで地元の農産物や観光地を発信する自治体が、年間で過去最多となったことがCM総合研究所への取材で分かった。ブランド米売り込みや観光客呼び込みの起爆剤としたい考えで、人口減少による自治体間の競争激化が背景にある。
人気グループTOKIOの城島茂さんが「果肉がキュッ 福島の桃」とポーズを決め桃をほおばる。東京電力福島第1原発事故の風評被害払拭のために放映され、CM総研の好感度調査で、最も高い評価を得た自治体のテレビCMだ。
CM総研によると、2018年10月から1年間で、東京都を含む15自治体が首都圏でCMを放映。7県が高価格帯のブランド米で有名タレントを起用するなど熱を帯びている。
山形県は新品種の「雪若丸」に俳優の田中圭さんを起用し、若年層に訴えた。「認知度を底上げするのに確実なツール」(県の担当者)で、会員制交流サイト(SNS)を中心に反響もあった。
岩手県のご当地米「金色の風」のCMでは女優、のんさんが、福井県の「いちほまれ」では歌手の五木ひろしさんがそれぞれ登場する。
茨城県はお笑いコンビのカミナリが地元の海鮮丼をPR。担当者は「茨城の魅力を知ってもらい、観光業を盛り上げたい」と意気込む。
自治体の広報に詳しい北海道大の北村倫夫教授は「人口減少に苦しむ地方は外から消費を促すことで、地域間の競争に勝つ必要がある」と分析する。
ただ効果が期待できる一方、宣伝には多額の費用がかかる側面もある。ある県では放映料を含めたブランド米の広報に、年間2億円を投入した。北村教授は「税金を使っている以上、費用対効果も重要だ。自治体の特色を出すためにも、ターゲットを絞り戦略的に広告を打つ必要がある」と指摘している。