海外情勢

アメリカ、対中貿易包括合意遠く 「第1段階」は関税引き上げ延期など

 トランプ米大統領は、中国との貿易協議で「第1段階の合意」に達したと発表した。中国が米農産品の購入を増やし、為替操作を控える代わりに、米国は15日に予定していた中国への制裁関税引き上げを見送る。部分合意を正式な文書にして11月中旬の署名を目指す。世界経済に悪影響を及ぼす米中の対立激化をひとまず回避した。両国とも景気が減速しており、部分的でも合意を急ぐ思惑が一致した。

 ワシントンで10、11日に開いた閣僚級貿易協議を終え、トランプ氏はホワイトハウスで中国代表団を率いた劉鶴副首相と面会し「両国にとって素晴らしい内容だ」と評価した。

 中国国営通信の新華社は12日、農業や知的財産権保護、為替などで「実質的な進展があった」と報じ、最終合意に向け双方が努力すると伝えた。

 第1段階では、中国の知的財産権侵害や技術移転強要といった解決が難しい問題は先送りした。トランプ氏は「第2、第3段階」として今後も協議を続ける意向を示したが、包括協定が実現するめどは立っていない。

 トランプ氏は11日、「中国が400億ドル(約4兆3000億円)から500億ドル規模の米農産品を購入する」と説明。知財保護の強化策に加え、金融分野の市場開放、意図的な通貨安誘導を防ぐ条項が含まれるという。

 トランプ氏は11月にチリで開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に合わせ、中国の習近平国家主席と会談して署名する考えを示した。中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)の禁輸措置緩和は今後の協議対象とした。

 米政権は8月、自国通貨を安値に誘導しているとして中国を「為替操作国」に認定した。ムニューシン米財務長官は「操作国認定を外すかどうか精査する」と述べた。

 米政権は今月15日、中国からの輸入品2500億ドル分を対象にした制裁関税第1~3弾の税率を25%から30%に引き上げる計画だった。12月15日に予定する第4弾の一部約1600億ドル分の対応は未定とした。(ワシントン、北京 共同)

【用語解説】米中貿易摩擦

 米国と中国との間で起きた貿易不均衡をめぐる対立。米国は中国の知的財産権侵害などを理由に、制裁「第1~3弾」として中国からの輸入品のうち計2500億ドル(約27兆円)分に追加関税を昨年7月から順次発動、中国も報復関税で対抗した。米国は制裁第4弾でほぼ全ての輸入品を追加関税の対象にし、今年9月にその一部を発動した。(共同)

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