国交省、27年ぶりに不動産業ビジョン 月内にも公表 所有から利用踏まえ方向性


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 国土交通省が27年ぶりに不動産業ビジョンを取りまとめ、月内にも公表することが15日、分かった。少子高齢化・人口減少というこれまでにない厳しい経営環境下で、不動産業界の目指すべき方向性を共有することが狙い。不動産の所有から利用への流れが強まり、販売への逆風となっていることを踏まえ、空き家の修繕や用途転換、不動産関連企業の事業継承などの重要性を指摘している。

 新ビジョンは令和12(2030)年時点の不動産業のあり方に焦点をあてている。過去には建設省時代の昭和61(1986)年と平成4(92)年の2回策定していた。今回は人口減少局面に入る中で初めてのビジョンを示す。

 人口減少や少子高齢化が進む中で世帯数は減少しているが、高齢者の単独世帯や空き家は増加している。このため新ビジョンは現在ある住宅などで管理、修繕、改修を適切に行う「ストック資産」の有効活用が必要だとしている。空き家や休眠不動産は宿泊施設などへの用途転換も求められるとした。

 また、アパート投資や原野商法など、悪質な不動産業者が存在することなども問題視し、コンプライアンス(法令順守)や顧客視線での業務透明化を進めるべきだとまとめた。

 一方、新ビジョンは、中小の不動産事業者では従業員の定着率が低いうえに経営者の高齢化も進み、事業継承が難しくなっていることも指摘。働き方改革やキャリアアップの支援に加え、廃業を検討する事業者と開業を希望する事業者とのマッチングの必要性などを盛り込んでいる。

 さらに外国人の訪日拡大のためのホテルやMICE(マイス)と呼ばれる国際会議場や展示会場など、日本の国際競争力向上につながる不動産の整備も打ち出している。