アジア開発銀行(ADB)の中尾武彦総裁は15日に東京都内で開いた記者会見で、アジアの経済成長は「全体として堅固である」との見方を示した。理由としては、内需の強さや技術革新の進展に加え、1997年のアジア通貨危機以降、マクロ経済の運営が安定していることを挙げた。
ADBは香港、韓国、シンガポール、台湾を除くアジアの途上国全体で、2019年の実質国内総生産(GDP)成長率が、前年比0・2ポイント減の6・2%になると予測している。
ただ、中尾氏はアジアの経済運営に関し、「中央銀行に独立性があって金融政策も安定している」などと指摘。途上国の対中国債務の増加は「注意材料」としつつ、「ただちに(成長の)阻害要因になることはない」と分析した。
米中貿易摩擦に関しては「消費者や投資家の心理に悪影響を与えるなどすれば相当大きな影響がある」としつつ、「現在はそういうことになっていない」とした。対中強硬派である世界銀行のマルパス新総裁が対中融資を減らす方針を表明していることに絡んでは、「ADBは対中融資を量的にも比率的にも今の水準を維持しながら、気候変動など(の投資案件)を中心にやっていく」と話した。