【ワシントン=塩原永久】日米両政府が15日(日本時間16日未明)からワシントンで始める新たな貿易交渉を前に、米政府内で日本と結ぶ協定に「為替条項」の挿入を求める声が出ている。米国内ではサービス分野まで含めた包括的な合意を求める声も根強く、幅広い対日要求が噴出している形だ。交渉の対象範囲を話し合う16日までの初会合で双方が折り合えるかが焦点となる。一方、米政府が検討中の自動車関税について日本側は、協議中は発動しないことを米国側に念押しするとみられる。
ムニューシン米財務長官は13日、日本との協定に「(輸出)競争力を高める通貨切り下げを禁じる為替条項が含まれる」と指摘。メキシコなどと結んだ過去の貿易協定の本文に同条項を挿入してきたトランプ政権の交渉方針を改めて強調した。こうした条文が本文に入れば拘束力が強くなり、為替政策について将来的に日本の手足を縛る圧力となりうる。
茂木敏充経済再生担当相と米通商代表部(USTR)のライトハイザー代表が出席する初会合は交渉範囲が議題だ。米国側はサービス分野を含む包括的な自由貿易協定(FTA)を重視しており、米国からの要求が広範囲になる可能性がある。
ただし米国内でも環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)発効で不利な競争条件を強いられている農家は農業分野に絞った早期妥結を主張。こうした米国内の足並みの乱れは、交渉範囲の取り決めに時間がかかる要因となりそうだ。
日米は昨年9月の共同声明で、米政府が検討する輸入車や自動車部品への関税について、交渉継続中は日本に課さないことを確認した。ただ、トランプ米政権は鉄鋼製品などへの追加関税をめぐり、新たな貿易協定を結んだメキシコや通商協議中の中国などに対し、合意後も関税を据え置くと主張。「関税マン」を自称するトランプ大統領は関税を交渉の駆け引き材料とする姿勢を強めている。
このため日本政府は、共同声明の趣旨に沿った関税の棚上げや撤廃を米側に改めて確認するとみられる。