世界貿易機関(WTO)の紛争処理手続きの「最終審」にあたる上級委員会は11日(日本時間12日未明)、韓国による福島など8県産の水産物輸入禁止措置を不当とした「一審」の紛争処理小委員会(パネル)の判断を破棄した。上級委がパネルの判断を覆すのは異例で、日本は逆転敗訴となった。吉川貴盛農林水産相は12日、閣議後の記者会見で「食品の安全性は否定されていない」と強調し、引き続き韓国など輸入を規制している国に撤廃を求める考えを示した。
平成23年の東京電力福島第1原発事故を起因とした放射性物質の影響を懸念する韓国の訴えに沿った判断で、上級委は、パネルの判断はWTOの検疫関連協定の解釈に誤りがあると指摘。パネルでは「水産物の有害性」が焦点だったのに対し、上級委では「環境と食品の間のリスク防止」に変わったことで判断が異なる結果となった。関係者から「日本のロビー活動不足」を指摘する声も出ている。
韓国は原発事故を理由として25年から青森、岩手、宮城、福島、茨城、栃木、群馬、千葉の8県で水揚げ・加工された全水産物の輸入を禁止しているが、今回の判断は「必要以上に貿易制限的」としたり、日本を不公正に差別したりしたものとはいえないとした。