政府の有識者懇談会が2日にまとめた提言は、脱炭素社会の実現に向けて日本が長期的に取るべき方策を挙げた。温室効果ガスの代表格である二酸化炭素(CO2)を効率的に回収し、燃料や原材料として再利用することで、大気へのCO2排出抑制につなげる取り組みもその一つ。ただ、技術の確立に加え、商業的に成り立つ水準へのコスト低減が課題となりそうだ。
「CO2は、事と次第によっては、一番優れた、しかも最も手に入れやすい、多くの用途に適した資源になるかもしれません」
安倍晋三首相は1月下旬のスイス・ダボス会議でのスピーチでこう語った。
CO2は温暖化の要因である温室効果ガスの代表的存在だ。経済産業省は、このCO2を「炭素資源」として捉え、効率的に回収してさまざまな方法で再利用する流れを「カーボンリサイクル」と位置づけた。
例えば、回収したCO2と水素から、都市ガスの主成分となるメタンを合成。ほかにも、CO2をセメントやプラスチックの材料としたり、植物工場での生産促進に活用すれば、結果としてCO2排出を抑える効果も期待できるとみる。
CO2を一概に厄介者として扱うのではなく、「逆転の発想」で循環的に使っていこうという試みだが、実際にCO2を回収して資源として再利用する上ではさまざまな技術の確立が必要だ。加えて、企業がカーボンリサイクルにメリットを見いだして自社の事業で継続して使っていくにはコスト低減が欠かせない。
懇談会が今回まとめた提言は、カーボンリサイクルを築くことで「CO2の排出抑制を目指す明確なメッセージを打ち出し、関連する技術の開発・普及に取り組む姿勢を世界や企業に示すべきだ」と言及した。