地球温暖化防止の枠組み「パリ協定」に基づき日本の長期的な対策を検討してきた政府の有識者懇談会は2日、今世紀後半のできるだけ早期に二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスの排出量を実質的にゼロにする「脱炭素社会」の実現を目指すとした提言をまとめた。安倍晋三首相は同日の懇談会会合で、提言を踏まえて政府としての長期戦略を6月の大阪市での20カ国・地域(G20)首脳会議までにつくる方針を示した。
政府は、2050年までに80%の温室効果ガスの排出削減を掲げている。提言はこれよりも先を見据え、今世紀後半の早期に実質ゼロにすべきだとし、長期戦略は「野心的なビジョンを位置づけるものでなければならない」と強調した。
パリ協定は、努力目標として世界の平均気温の上昇を産業革命前より1・5度高い水準に抑えることを掲げる。提言は、日本がこうした目標の実現に貢献することの重要性に触れた。
主な方策としては、工場や発電所から排出されるCO2を回収し地下貯蔵する技術や、CO2を燃料や原材料として再利用する技術の開発に加え、利用時にCO2を出さない水素の製造コストの大幅な引き下げに取り組むべきだとした。
CO2排出が多く国際的逆風が強まっている石炭火力発電は、依存度を可能な限り引き下げることを求めた。また、炭素税などCO2排出に課金することで排出抑制につなげる「カーボンプライシング」の導入については「専門的・技術的な議論が必要」とした。