消費税を導入した当事者は現状をどうみているのか。大蔵省(現財務省)元事務次官で消費税導入時の税制第二課長、5%への増税時は主税局長の薄井信明氏(78)=オリックス社外取締役=に聞いた。
--消費税の導入までには曲折があった
「それぞれの時代でこれが正しいと考えて動いたが、国民の理解を得られず導入に2回も失敗した。その反省の延長線上に平成元年の消費税導入がある。国民も政治も公務員も時間をかけて苦労し理解を深め、やっとこぎ着けた成果だった。今のように多様な手段で大量の情報が飛び交う時代だと議論がまとまらず難しかったかもしれない。その意味でも大事にしていかないといけない税だ」
--国民の抵抗感は今も強い
「赤字国債脱却のための税という側面だけで捉えると悪いイメージとなる。消費税は今後とも膨らんでいく社会保障の財源であり、税制全体をより公平で時代に合ったものにしていくうえで大きな役割を果たしている。この点を十分に説明できていなかったのは反省点だし、今後とも説明を尽くすべきだ」
--果たしている役割とは
「避けられない財政需要の拡大を賄うには、無駄な歳出の整理は当然として、どうしても増税が必要になる。それを所得税や法人税に求めるのは、働く世代の負担や経済活動の国際化を踏まえると限界がある。消費税は低所得層ほど負担感が重い『逆進性』という欠点はあるが、どの国も複数税率、他の税や社会保障などとの組み合わせで対応している」
--10月には税率10%への増税も控えている
「もちろん上がってほしい。ただ、今後、リーマン・ショック規模のことが起これば、引き上げを延期する判断も必要だ」