消費税が平成元年に導入されてから4月1日で30年となる。振り返れば増税やその議論が行われるたびに政権の支持率低下や景気の落ち込みを招き、増税がたびたび見送られるなど挫折の連続だった。消費税は、政権の“鬼門”となり、税率引き上げは2回のみ。半年後の10月には税率10%への引き上げが予定されているが、景気への悪影響を最小限に抑え、財政健全化と社会保障の充実につなげられるかが問われている。(蕎麦谷里志)
「政治に翻弄された歴史」。ある財務省幹部は皮肉混じりにこの30年を、こう表現する。日々の買い物で支払う消費税。国民の関心も高く、税率引き上げ時には野党が与党を攻撃し、与党も引き上げ延期で国民の支持を集める「道具」として政治利用されたとの思いが強いからだ。
消費税を昭和53年に「一般消費税(仮称)」として最初に提唱したのは大平正芳政権だ。将来の高齢化社会を見越し、安定した財源確保のための構想だったが、「歳出カットが先だ」との世論が高まり翌年の衆院選で大敗。中曽根康弘政権では62年に「売上税」と名称を変えて法案を提出したが廃案となった。
導入にこぎ着けたのが竹下登政権だった。それまでのぜいたく品にかかる「物品税」を廃止し、平成元年4月1日に3%の税率で導入された。しかし、国民は猛反発。2カ月後には退陣に追い込まれた。