平成31年度予算は、今年10月の消費税増税による景気腰折れを防ぐことに全力を尽くした予算となった。キャッシュレス決済による買い物へのポイント還元の原資といった景気対策に2兆円超を計上するなどした結果、一般会計総額は初めて100兆円を超えた。ただ、税収不足を補うための新規国債発行額は32兆円となり、財源の3割を“借金頼み”で賄う構図は変わらず、財政再建の足取りは鈍い。
平成の予算は膨脹(ぼうちょう)が常態化しており、31年度もこの流れを止めることはできなかった。押し上げたのは、2兆円超を盛り込んだ景気対策だ。今年夏の参院選も意識して、政策が「総動員」された結果、現金を使わず買い物した人へのポイント還元策、低所得者などに配るプレミアム付き商品券、災害に強い国土を作る「国土強靱(きょうじん)化」策-など多岐にわたる内容となった。
このほか、高齢化を背景に拡大する社会保障費、東アジアの有事に備えた防衛費も、それぞれ過去最大を更新。本来、歳出の抑制に動く財務省も「まずは10月の消費税増税を確実にしたい」との思いから、安倍晋三政権の求める歳出の拡大を容認した。
ただ、景気対策の中には「どの程度、実際の消費にお金が回るか分からない」として、効果が疑問視される政策もある。効果がなければ、お金の無駄遣いだ。
また、国債の新規発行額は9年連続で減額を達成したが、実際には、預金保険機構の剰余金8千億円を税外収入に繰り入れるなど一時的な対策を使って実現した面があり、「見せかけの国債減額だ」とも批判されている。
政府は財政健全化に向け、37年度に国と地方の基礎的財政収支(PB)を黒字化することを目指している。だが、歳出改革に踏み込まず今後も財政の膨脹を許せば、またもや黒字化の時期を先送りすることになり、財政再建の意思を疑われることになりかねない。