【ベルリン=宮下日出男】欧州連合(EU)の加盟国は22日、ブリュッセルで行われた首脳会議で、第5世代(5G)移動通信システム整備での安全保障を確保するため、EUとしての協調的な対策を取りまとめるよう、EUの行政執行機関の欧州委員会に要請した。中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)を念頭に置いた対応だ。
華為をめぐっては、米国が機密情報漏(ろう)洩(えい)などの懸念から、5G整備での同社製品の排除を欧州に強く働きかけている。だが、加盟国間で温度差がある上、対応も各国の判断に委ねられているため、EU共通の対処を求める声が出ていた。
5G対応は首脳会議で重要議題となった対中新戦略の議論の一環。首脳会議の声明によると、欧州委はこのほか、域内市場の公正な競争をゆがませる中国の国有企業や国家補助への対処も年内にまとめる方針だ。
経済・政治的な影響力を増大させる中国に対しては近年、欧州でも警戒が高まっている。欧州委は先立つ12日、中国をパートナーであると同時に「競争相手」と位置づけ、10項目の具体的な行動を盛り込んだ「戦略見解」を公表。首脳会議が決めた内容もこれに沿った取り組みだ。
EUのトゥスク大統領は22日、中国と4月9日にブリュッセルで行う首脳会談で国家補助などへの対応を求める考えを示し、「説得できると期待する」と強調。ユンケル欧州委員長は「中国はライバルでもあり、この状況に適応せねばならない」と述べた。