米連邦準備制度理事会(FRB)は20日、2019年の利上げを見送る方針を示した。これまで独り勝ちを続けてきた米国経済の鈍化が浮き彫りとなったことで、日本銀行の金融政策も影響を受ける可能性が強まっている。景気が一段と悪化すればFRBの「次の一手」は利上げではなく利下げになるとみられ、日米の金利差縮小による円高を防ぐため、日銀も追加緩和を余儀なくされるからだ。
日銀は大量のお金を世の中に供給する大規模金融緩和で住宅ローン金利などの目安となる長期金利を0%程度に誘導している。米国の利上げで金利が高いドルで運用した方が、円より利益が出るため、これまで円を売ってドルを買う円安方向の動きが強かった。ただ、米国の年内利上げ停止で円売りの流れは弱まる。
実際、休日明け22日の東京外国為替市場の円相場は1ドル=110円台後半で取引され、円買いドル売りが優勢となった。世界的に低金利が続くとの見方から国債が買われ、長期金利の指標である新発10年債の終値利回りはマイナス0・075%と約2年4カ月ぶりの低水準。日経平均株価は終値こそ小幅に続伸したものの円高を警戒する売り注文で下落する場面があった。
一方、米金利先物市場ではFRBが来年利下げするとの観測が強まっており、「2020年に1回利上げする」との経済見通しは既に疑われている。イエレン前FRB議長は今年2月、米テレビ番組で、中国や欧州の景気減速が米国まで及べば次の行動は利下げになるとの見方を示していた。
米国が利下げに転じれば、日米の金利差は逆に縮小し円高が加速する。ただでさえ米中貿易摩擦の悪影響で輸出が減退している国内企業の業績は一層の下押し圧力にさらされそうだ。
日銀が持つ追加緩和の手段は限られており、市場関係者は副作用が比較的少ない上場投資信託(ETF)の買い増しによる株価下支えを有力視する。ただ、米利下げのショックを吸収するには、金融機関の経営体力を奪うマイナス金利政策の深掘りなど「劇薬」が求められるとの指摘もある。(田辺裕晶)