高額スマホは買いづらく 携帯値下げ法案の影響

閣議後に記者会見する石田総務相=5日午前、国会
閣議後に記者会見する石田総務相=5日午前、国会【拡大】

 政府が5日に国会提出した電気通信事業法改正案。義務づけられた携帯電話端末代金と通信料金の完全分離は、携帯大手が提供する料金プランの複雑さを解消し、消費者が通信料金を比較しやすくすることで業界内の価格競争を促す狙いがある。一方、スマートフォン本体の値引きは今後抑えられ、高額な最新端末を頻繁に買い替える消費行動は減退が避けられない。

 「政府の役割は事業者間で競争がしっかり働く仕組みを整備することだ」。菅義偉(すが・よしひで)官房長官は5日の記者会見で、携帯電話料金の引き下げに向けた法改正の意義を強調した。

 携帯電話料金をめぐっては、昨年8月に菅氏が「4割程度下げる余地がある」と発言し、値下げ議論が活発化。総務省が有識者会議を設置して法改正の検討を開始した経緯がある。菅氏は「料金が不透明で、諸外国と比べて高いとの指摘があることを踏まえ発言してきた」と語った。

 政府は料金プランの複雑さが解消され、消費者が携帯会社の乗り換えがしやすくなれば、価格競争が活発化し、諸外国と比べて高額とされる通信料金の引き下げにつながるとみる。来年度中には一定期間に消費者が支払う通信料金と端末代金の総額を表示するよう携帯会社に求める関連指針の改正を行う予定だ。

 別の大きな効果もある。これまでの端末値下げは利用者全員の通信料金を原資としていたため、端末を頻繁に買い替える人は恩恵が大きい一方、同じ端末を長く使う人は割高な料金を支払うメリットが少なかった。端末と通信料金が分離されればこうした利用者間の不公平も解消される。

 一方、米アップルのiPhone(アイフォーン)の最新機種は10万円を超えるなど、高機能化に伴って端末価格の高騰が進んでいるが、通信料金の値下げで端末の値下げ幅が抑制されると消費者はこれまでのように頻繁に端末を購入することは難しくなる。高機能端末の売り上げは日本の部品メーカーの業績にも関わる可能性があり、日本経済全体への影響については注視する必要もある。