世銀総裁選 対中融資削減へ強硬派の米財務次官擁立

デービッド・マルパス米財務次官(左)とトランプ大統領=6日、米ホワイトハウス(UPI=共同)
デービッド・マルパス米財務次官(左)とトランプ大統領=6日、米ホワイトハウス(UPI=共同)【拡大】

 4月までに決まる予定の世界銀行の次期総裁候補に、米国が対中強硬派のデービッド・マルパス米財務次官を擁立している。日本は支持に前向きで、経済大国となった中国への支援を減らすなどの改革を着実に進めるよう求める考えだ。ただ、出資比率に応じた世銀での中国の投票権割合は上昇しており、いずれ日本を抜いて、首位・米国に次ぐ2位になるとの見方も浮上。中国の発言権が増す中、改革は難航も予想される。

 「強力な候補者と評価している」。麻生太郎財務相は2月10日、支持を求めるため来日したマルパス氏と会談後、記者会見でこう述べた。

 同月1日付でのジム・ヨン・キム前総裁の辞任を受けた新総裁選びは、今月14日まで推薦を受け付けた後、世銀の審査などを経て4月までに行われる予定だ。

 これまで挙がっている候補は、トランプ米大統領が2月6日に指名したマルパス氏のみ。もっとも、今後ほかの国が対抗馬を立てる可能性があり、日本は「よく検討を行った上で」(麻生氏)支持を正式表明したい考えだ。

 マルパス氏は2016年の米大統領選で経済顧問を務め、現在は米中貿易協議にも参加。中国への厳しい姿勢で知られ、世銀総裁候補の指名を受けたときには「中国は世界2位の経済大国で世銀を『卒業』するレベルになっており、対中融資を速やかに減らすことが望ましい」と述べた。

 既に世銀は昨年4月、米国の意向も反映し、中国、ブラジルなど高所得国への支援を、全体の4割から3割へ引き下げる改革案で合意している。マルパス氏はこの改革を着実に進める考えを示した形で、麻生氏とも会談時に同じ認識で一致した。

 一方、中国は世銀運営での発言力を強めている。改革案に合わせて決まった合計130億ドル(約1兆4500億円)の出資国による世銀への増資では、今後、各国が国内手続きを経るなどして出資を進めた場合、投票権割合が、首位の米国は昨年6月時点の15・98%から15・87%に、2位の日本は6・89%から6・83%へ下がる見通し。これに対し、3位の中国は4・45%から5・71%へと大きく増える。

 これに関し、日本政府内からも「今後、さらなる増資が行われれば、中国が日本を抜き2位になる可能性もある。新総裁は、中国を強引に封じ込める姿勢は取りにくくなるのでは」との見方が出ている。

 日本も経済大国となった中国が支援を受け続け、開発途上国を“借金漬け”にして影響力を強めている手法を問題視している。米国の同盟国として世銀の改革をどう支えるのか、役割はより重要になりそうだ。

(山口暢彦)

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 世界銀行 途上国の発展と貧困削減を支援する国際開発金融機関で、本部は米ワシントン。第二次世界大戦後の世界経済を安定させるため結ばれたブレトンウッズ協定に基づき1945年に発足した。現在加盟しているのは189カ国で、資金調達は加盟国からの出資や世界銀行債券(世銀債)の発行でまかなっている。総裁はこれまで米国人が歴任してきた。