国内

日米貿易交渉、日本側に警戒感 車の輸入数量規制などで対日攻勢を強める懸念

 米通商代表部(USTR)のライトハイザー代表が、日本との物品貿易協定(TAG)の早期交渉入りに意欲を示したことに対し、日本側は警戒感を強めている。日本政府は5月下旬に予定するトランプ米大統領の来日までに交渉を始めたい考えだが、米国が日本車の輸入数量規制や通貨安誘導を禁じる為替条項を要求するなど、対日攻勢を強める懸念がある。

 「いつどこで開催するか、具体的な調整はこれからと聞いている」。菅義偉官房長官は28日の記者会見で、TAG交渉の開始時期や場所の明言を避けた。

 TAGは、米国の国内法上は1月にも交渉を始められた。だが、ライトハイザー氏が中国との貿易協議に集中していたため、先送りされてきた。

 ライトハイザー氏は3月にも交渉を開始したいとの考えを示したが、日本政府の高官は28日の時点で「正式な要請はない」と説明。日本側の交渉担当者である茂木敏充経済再生担当相が当面、国会対応に追われることもあり、日本政府は4、5月を軸に交渉に入る方向で調整する。

 TAGの初会合では、交渉範囲の協議に入る見通しだ。昨年9月の日米首脳会談では、農産物など物品の関税を協議することで合意した。関税以外では、米国が日本車の輸入数量規制や、医薬品や医療機器の規制見直しなどを求める可能性がある。

 さらに、日本側は為替条項が日米間で争点化し、金融政策の自由度が失われることに身構える。日本は2011年11月の円売り・ドル買い以降、為替介入をしておらず、米側の関心は日本銀行の大規模金融緩和を「事実上の円安誘導」と批判することにありそうだ。保護主義的な条項をのまされれば、円高圧力が強まる恐れがある。

 多額のお金を供給して景気を下支えする大規模金融緩和は各国の中央銀行がリーマン・ショック以降相次いで導入しており、条項の書きぶり次第では米連邦準備制度理事会(FRB)の政策をも縛りかねない。

 ただ、米政府は米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)に続き、中国との貿易交渉でも為替条項の導入を要求。日本にも競争的な通貨切り下げの防止に加え、金融政策の透明性確保などを求めるとみられている。2%の物価上昇目標の実現まで現行政策を粘り強く続けたい日銀にとって逆風になる可能性がある。(大柳聡庸、田辺裕晶)

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