ASEAN議長声明、南シナ海「懸念」の文言盛り込まず 中国に配慮か

 【シンガポール=吉村英輝】東南アジア諸国連合(ASEAN)は16日、マニラで13日に開いた首脳会議の議長声明を発表した。一部加盟国と中国が領有権で対立する南シナ海問題では、過去の声明で使われてきた「懸念」の文言が消え、新たに「ASEANと中国の関係改善に留意」するとの表現が入り、中国に配慮した内容となった。

 前回4月の首脳会議の声明では、従来の声明に盛り込んでいた「信用の失墜」といった厳しい言葉を避けつつも、「地域での最近の出来事に複数の首脳が示した懸念に留意する」とし、名指しを避けながら、中国が造成した人工島の軍事拠点化を批判していた。

 産経新聞が入手した11日段階の今回の声明の草案では、南シナ海問題の項目だけ空白になっており、議長国フィリピンが文言の最終調整を進めていた。

 一連のASEAN関連首脳会議では、トランプ米大統領が、南シナ海問題を含むアジアの安全保障政策で明確な態度を示さなかった。一方、中国では習近平国家主席が長期政権への基盤を築き、南シナ海情勢もとりあえず平穏を保っている。このため、「(南シナ海問題に)触れずにいるのがいい」との議長国フィリピンのドゥテルテ大統領の対中融和路線が声明に表れた形だ。

 北朝鮮による核・ミサイル開発をめぐっては、声明案にあった「大量破壊兵器開発の進展」という表現は消え、トーンが弱まった。