学校法人「加計学園」の獣医学部が設置される見通しとなったが、公衆衛生などを担う公務員獣医師不足は地方で深刻化しており、課題は残ったままだ。
農林水産省によると、平成26年12月末の獣医師の届け出数は3万9098人。分野別ではペットを診る小動物獣医師が38・9%で最も多く、公務員獣医師(24・2%)▽大学教員や医薬品開発などの「その他」(14・2%)▽牛や豚などの産業動物獣医師(11・0%)-などとなっている。
公務員獣医師の確保に苦労している自治体は少なくない。「来年度採用予定者のうち既に数人が辞退した。他県との取り合いですよ」と話すのは岩手県の担当者。10人程度を募集し、10人に内定を出したが、他県と併願した内定者から辞退が相次いだという。定員割れは数年続いており、採用状況は依然厳しい。
公務員獣医師が不足するのは、希望者が相対的に少ないためだ。毎年約1千人いる獣医学系大学の卒業生のうち、4割程度がペットを診る獣医師になり、公務員獣医師は2割程度。その少ないパイを国や自治体が奪い合っている。関係者は「ペットの獣医師希望者が多いため、公務員希望者が増えにくい」と嘆く。
中国では鳥インフルエンザウイルスによる人への感染被害が深刻化しており、日本でもワクチンの備蓄・製造を含む防疫態勢の強化は急務となっている。公務員獣医師や創薬分野で活躍する人材確保は待ったなしだ。