【上海=河崎真澄】11カ国が参加している環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉では“らち外”にある中国。だが、米離脱の間隙を突く形で将来的にTPPの主導権を握るシナリオも視野に、ベトナムで開かれる首脳・閣僚会合の行方に強い関心を寄せている。
中国はオバマ政権が進めたTPP交渉を“中国包囲網”とみなして警戒。中央アジア、欧州などを巻き込んだ新シルクロード経済圏構想「一帯一路」や、アジアインフラ投資銀行(AIIB)で対抗してきた。
だが、「トランプ政権が離脱を決定し、TPPの政治的目的は消えた」(上海の経済学者)と判断。「中国が米国なみの輸入パワーを発揮すれば、巨大な輸出市場を求めてTPPに参加した東南アジアなどを束ねて、TPPに中国が主導的立場で参加することは難しくない」(同)という。
とはいえ、中国のTPP参加には、国有企業の抜本的な改革や農業分野の市場開放など、難しい課題をいくつも抱えている。それでも「交渉主導権さえ握ってしまえば、TPPルールそのものを中国式に塗り替えればいい」(同)との自信がある。チリやペルーなどに、中国の参加を求める動議を出させるなどの戦術も検討しているもようだ。
8日に初訪中するトランプ大統領が貿易で保護主義的な政策を強める中で、中国が自由貿易の“旗手”をアピールするという皮肉な構図が浮き彫りになっており、TPP交渉は今後も米中に振り回されそうだ。