商工中金、国の予算削減に焦り 「デフレ」拡大解釈で不正融資が横行

 政府系金融機関の商工中金による不正融資問題で、東日本大震災後に膨れあがった国の予算措置を維持するため、危機対応融資の案件を水増ししていたことが13日、分かった。物価が下がる「デフレ」を拡大解釈することで、本来は危機的状況にない企業にも貸し付けていた。ほぼ全店で数百人の職員が関わり、不正は数千件に上る見込みで、安達健祐社長ら経営陣の退任は避けられない見通しだ。

 危機対応業務は災害や景気低迷に苦しむ中小企業に設備投資資金などを低利で貸す仕組み。利子の補給や滞った返済の損失補償に国の予算を充てる。震災直後の2011年度は3度の補正予算で前年度比10倍の計約4兆円を計上したが、その後は減少に転じ、12年度以降は2兆円を下回った。

 融資案件が減れば国の予算が削減されかねないとの焦りから現場には過大な営業目標が課された。その結果、一時的な業績悪化でもデフレが原因と書類を改竄(かいざん)する不正が横行。震災名目の融資が激減した12年度以降も案件数を維持した。

 商工中金の危機対応融資は17年8月末時点で約22万3000件、12兆4942億円に上り、融資残高の3分の1を占める主力事業だ。

 民業圧迫の批判もある中、政府系金融機関として差別化を図るため低利融資の枠組みを確保したい思惑も背景にあったとみられる。

 商工中金の自主調査では全国100店舗の大半でこうした不正の疑いが判明した。10月末にも調査結果と経営陣の処分を公表する。

 経済産業省や財務省、金融庁は5月に続き2回目の業務改善命令を出す方針だ。危機対応融資は「危機」の認定を厳格化し融資範囲を絞るなど制度を抜本的に見直す。再発防止に向け、安達社長の後任に民間出身者を充て、取締役の過半数を社外とする組織改革案も検討している。