【2017衆院選 政策を問う】(1)消費税増税 土居丈朗・慶大教授


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 ■凍結しても消費増加の保証なく

 消費税の争点化は、国民に国の財政がどうあるべきかを問うきっかけになる。聞こえの良いことばかり言う政党に票を入れるのか、痛みを伴いながら財政の帳尻合わせの努力をする政党を評価するのか、国民は判断しなければならない。

 消費税増税を予定通り実施し、増税分の使途を組み替え、新たに幼児教育の無償化などに充てる与党の方針は、次善の策として容認できる。ただ、大学授業料の負担軽減までは実施すべきではなく、その部分は歳出の抑制に使うべきだ。歳出が拡大し借金が減らせなければ、ますます基礎的財政収支(PB)の黒字化目標を達成できなくなる。

 消費税増税を凍結、中止する一方で、子供教育の無償化などを訴える政党もあるが、増加する社会保障費をどう賄うのかなどの具体的な財源確保案が示されていない。国債金利がほぼゼロという状況にあぐらをかいており、赤字国債をいかに減らすかという発想がない。国債を増発すれば、余分な歳出がさらに増え、既存の国債利払い費も雪だるま式に増えるだろう。

 完全失業率が3%を下回る、この状況で消費税増税ができなければ、いつできるのかというターニングポイントに来ている。増税を凍結したから個人消費が増えるという保証はない。消費税増税をせずに将来に負担をつけ回せば、積み上がる社会保障費の圧縮は困難になる。そうなれば、結局、将来や老後の不安を助長して、足元の消費を停滞させることになる。

【プロフィル】土居丈朗氏

 どい・たけろう 東大大学院経済学研究科博士課程修了。2009年4月から現職。専門分野は財政学、公共経済学。政府の1億総活躍国民会議議員、財政制度等審議会委員、社会保障制度改革推進会議委員も務める。47歳。奈良市出身。