□一橋大学名誉教授・石弘光
3月以降、国会で繰り広げられた安倍晋三首相に直結する森友学園や加計学園を中心とする一連のやり取り、それを受けての内閣支持率急落をみて、さまざまな思いが頭をよぎってきた。
「誰も代わりがいない」と称され「安倍一強」と盤石を誇った安倍内閣があっという間に民意を失った背景に、国民の怒りとそれを表明できる民主主義の健全さを感じ取ることができよう。いわば「安倍一強の驕(おご)り」が限界に達し、そのツケを払ったとしか言いようがない出来事である。
李下に冠を正さず
第1に、騒ぎの最も大きな特徴は安倍首相ならびに夫人の知人や友人といった個人的な関係者が、国費や許認可といった国の政策に作用する舞台で主役を演じていることだ。「李下に冠を正さず」の諺(ことわざ)のとおり、本来ならこのような個人的関係があるなら国の施策から首相がその個人を遠ざけるのが筋だし、また依頼者も自ら身を引くべき節度を持つべきだろう。そうでないと今回のように、首相が知人、友人に便宜を図ったと疑われる結果を招く。「そういうことは一切ない」「問題ない」と首相が何度説明しても、舞台が出来上がっている以上、国民に対し釈明しきれるものでない。