サイバー攻撃の脅威が増す中、情報セキュリティー対策の専門家、園田道夫さんは10年以上にわたって、対策を担える若手技術者を育成する事業の運営に数多く関わってきた。今春から始めた政府の新事業では、25歳以下の47人が1年かけて独自の対策ソフトなどを開発する計画だ。人材育成のこれまでの成果や、今後の目標を聞いた。
--サイバー攻撃の現状をどう見るか
「お金があれば誰でも簡単に攻撃できるようになった『カジュアル化』が一番怖いと思う。ネット上で攻撃ツールを買えて、世界に一つだけのウイルスを30秒で作れる。高度な技術をカジュアルに使えるようになったことは、攻撃側にとって大変メリットが大きい。中高生がウイルスを作成して逮捕される例も出ている」
--新しい手口にはどんなものがあるのか
「本当に新しいものは多くない。過去の技術の組み合わせと洗練化だ。ファイルを暗号化して読めなくし復旧のための金銭を要求する『身代金要求型ウイルス』が世界的な問題になっている。データを読めなくするウイルスは以前からあったが、匿名性が高い仮想通貨のビットコインという支払い手段と結びついたことで一気に広がった。ネットでどんどん便利になっている仕組みを、悪い人たちの方が先進的に取り入れている現状がある」
--若手セキュリティー技術者を育てる事業に関わったきっかけは
「2003年に高校生がセキュリティー技術を競う『セキュリティ甲子園』(経済産業省主催)というイベントの企画に関わったが、新聞で『ハッカー甲子園』と報道されたため、税金でハッカー育成とは何事かという声が出て、取りやめになった。翌年以降、20歳未満を対象にした合宿形式の勉強会『セキュリティ・キャンプ』(現在は22歳以下)という形に変えて実施し、それが今の多くの事業につながった」