フィリピンは、イスラム教の戒律に則したハラル産業の振興と輸出増加を図る。同国の貿易産業省幹部が、政府の振興策によりハラル製品の輸出額を2017年の推定8億ドル(約900億円)から18年に14億ドルに引き上げることも可能だとの見解を示した。現地紙マニラ・タイムズなどが報じた。
同国政府は、ハラル産業振興策について7月に着手した。具体的には、(1)農業・製造業で新たな製品基準をつくる(2)製品・サービスの市場確立と拡大を目指す(3)諸外国と基準の調整を図って合意を形成する-などの内容で、イスラム教徒(ムスリム)の多い南部ミンダナオ地方の経済成長にもつなげたい考えだ。
貿易産業省によると、すでにインドネシア、マレーシア、ブルネイ、カタール、サウジアラビアといった国々とフィリピンからのハラル製品の輸入拡大に関して合意しているという。同幹部は「製造業が国際的なハラルの基準を守り、製品のバリューチェーンに参加できるよう後押ししていきたい」とし、省として産業振興を支援する意向を示した。
また同幹部は、今年5月以降の武装勢力と国軍との戦闘で大きな損害を受けたミンダナオ島のマラウィ市をハラル産業振興によって復活させることに意欲をみせた。
政府はマラウィ市の復興に300億ペソ(約660億円)を投じるとしており、市内に経済区を設置してハラル産業の拠点とする構想もあるという。
フィリピン国内のムスリム人口は1100万人とされ、総人口のおよそ1割に相当する。世界のハラル製品市場は現在3兆2000億ドルで、30年には10兆ドルに成長するとの推測もある。(シンガポール支局)