□産経新聞客員論説委員・五十嵐徹
番組を放送と同時にインターネットでも流す、いわゆる常時同時配信の環境整備をめぐって、NHKが厳しい批判にさらされている。
NHKとしては、来年の通常国会で放送法の改正を済ませ、東京五輪・パラリンピック前年の2019年には本格サービスにこぎつけたい考えのようだが、民放などは、「あまりに性急だ」として反発を強めている。
そもそもNHKにネット同時配信を早期に解禁することは、政府の基本方針だった。現在の放送法の枠組みでは認められていないが、海外の公共放送では幅広く実施されているとの理由からだ。東京五輪に向けた目玉事業として政府主導でNHKに実験的に認め、民放各社も共同で参画する予定だった。
ところが7月上旬、総務省の有識者検討会でNHKの幹部がネット同時配信について「将来的には本来業務としたい」と発言したことで、NHKの事業拡大を警戒する民放事業者の危機感に火がついた。
NHKの上田良一会長は、本業はあくまで放送で、ネット配信は補完的存在にすぎないと火消しに努めたが、その後も同時配信に受信料を課す方針が明らかになったこともあり、NHKへの不信感は募る一方だ。
朝日は8月25日付社説で、「NHKのありようは現状を維持したまま、収入を得る道を確かなものにしようという姿勢だ」と受信料制度そのものの問題にも言及している。