インターネット上の仮想通貨「ビットコイン(BTC)」が、中国の奥地、5000メートル級の山々に囲まれた峡谷の一角で、新たに「採掘」されようとしていた。
青海チベット高原の東端、四川省甘孜(カンゼ)チベット族自治州の州都・康定市から崩れ落ちそうな山道を車で走ること2時間。水力発電所の敷地内にひっそりたたずむプレハブ2棟が、BTCを掘り出すコンピューターをぎっしり詰め込んだ「採掘場」だ。ブロードバンド回線を敷く作業の真っ最中だった。
コンピューターの熱を冷ますため壁の約20カ所に設置された大型冷却ファンは甲高い回転音を立て、準備が着々と進んでいる様子をうかがわせた。だが、責任者はいない。
「取材は受けない。早く出て行ってくれ」。しばらくして発電所の管理人が追い立ててきた。「金のなる木」の採掘場。税金などの問題があるためなのか、地元政府から施設を隠したがっているようだった。
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康定市から北東に3000キロの遼寧省大連市。その郊外にある3階建ての建物の内部には頑丈な鉄製のラックが並び、無数のケーブルが伸びていた。ここもやはりBTCの採掘場だ。
米ネットメディアが実態を報じた。実に3000台余りのコンピューターが24時間体制で稼働し、BTCを掘り荒らしていた。
この施設を保有するグループは他に5つの採掘場を保有。1カ月4050BTC余りを採掘し、150万ドル(約1億7000万円)を稼いだ。
こうした採掘場が年間に消費する電力は、人口10万人の都市に匹敵するとの指摘もある。ただ産業用電気料金が割安な中国なら、十分にもうけが出る計算だ。