安倍晋三政権が「岩盤規制の打破」と銘打って2014年に導入した国家戦略特区。政権の看板政策として、計10地域で外国人の就労や企業の農業参入などの規制緩和を実現したが、改革の成果では地域差が生じており、政策の新たな課題に浮上している。
◆外国人が家事代行
6月下旬、大阪市内のマンションをフィリピン人の女性2人が訪れた。台所のこんろを洗ったり、浴室の排水溝を手入れしたりするなど、てきぱきと家事をこなす。2人はダスキンが派遣した外国人従業員だ。
大阪府の国家戦略特区では外国人の家事代行サービスが解禁され、ダスキンが事業者として認定された。第1陣として8人のフィリピン人女性を採用。約2週間の研修を経て5月から現場に出している。この日、浴室を担当したアナリン・レデスマさん(26)は「最初、決められた時間内に作業を終えるのは難しかったが、慣れてきた」と話す。勤勉な態度に利用者の評判も良く、ダスキンは採用を増やす計画だ。
国家戦略特区は分厚い岩盤規制を外す突破口としての役割を担い、日本の国際競争力を高める狙いから当初は6地域が指定された。その後、安倍政権が掲げる「地方創生」を重視して選ばれた4地域が加わった。
◆小さな優等生
兵庫県北部の山あいに位置する人口2万5000人の養父市は「小さいながらも特区の優等生」(内閣府幹部)とされる。企業が農業に参入しやすい環境を整え、実績を上げているからだ。
医療、教育と並び岩盤規制の「代表格」である農業。養父市では企業が農業法人を設立する際の制限を大幅に緩和し、これまで11法人が立ち上がった。このうち、9法人は市外からの参入組で、農機大手クボタが主導する法人もあり、計35人の新たな雇用も生まれた。16年6月には、企業に農地取得を認める緩和も実施した。