日銀が昨年7月の金融政策決定会合で上場投資信託(ETF)の購入額の年6兆円への倍増を決めてから1年がたった。今年3月末時点の日本株の資産規模は15兆9000億円にまで膨れあがっている。株価下落に伴う経済への悪影響を抑える効果が出る一方、日銀が過度に株式市場に介入することには疑問の声もある。現状の緩和政策が長期化する中、株価が下落すれば日銀の財務が悪化する“副作用”も大きくなることから、「早く出口(金融緩和の縮小)に向かうべきだ」との意見が出始めた。
日銀は2010年に景気を下支えする包括的な金融緩和策の一環として、ETFの買い入れを開始。黒田東彦総裁就任後の13年に年1兆円、14年に年3兆円ペースに拡大するなど、購入規模を増やしてきた。この結果、現在の資産規模は、世界最大規模の機関投資家である年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)と米資産運用大手のブラックロックに次ぐ規模にまで拡大している。
日銀は、株価が下落する局面でETFを購入していることから、投資家の安心感を高める効果もあり、「アベノミクス景気」が続く中で日経平均株価は2万円前後まで回復。「マーケットにとっては(日銀のETF購入が)プラスであることははっきりしている」(日本証券業協会の鈴木茂晴会長)などと歓迎する声は多い。一方で、企業の経営姿勢や業績にかかわらず日銀がETFを購入することで、適正な株価形成ができなくなると批判する声も根強い。