政府は欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)が大枠合意したのに続き、米国抜きのTPP交渉でも早期の妥結を目指す。米欧で広がる保護主義に対抗して自由貿易の推進を強くアピールするとともに、アベノミクスの成長戦略の柱である巨大自由貿易協定(メガFTA)の機運を再び盛り上げたい考えだ。
11カ国でのTPP合意を急ぐのは、「米国第一主義」を掲げ2国間の通商交渉で日本に圧力をかけたいトランプ米政権を牽制(けんせい)する強力なカードになるからだ。
日欧の大枠合意を受け、米国の食肉業界は対日輸出で欧州勢より不利になると焦りを募らせている。TPPが成立すれば離脱した米政権への圧力は一層強まりそうだ。多国間の通商協定は米国にとって損だというトランプ氏の主張を突き崩し、米国をTPPに引き戻したいのが政府の思惑だ。
政府は成長戦略で、メガFTAを通じ日本企業の海外展開を後押しする方針を掲げている。トランプ政権の誕生以降、各地のメガFTA交渉は停滞したが、日欧合意の影響でTPP11カ国の結束も強まるとも指摘されている。(田辺裕晶)