もともと中国ではオンラインショッピングやチャットサービスの利用が盛んで、アリペイやウィーチャットペイの利用に必要なアカウントを多くの人が持っていたこと、さらにここ3~4年でスマートフォンが爆発的に普及したこともあって利用が一気に進んだ。設定も日本のおサイフケータイに比べて簡単で、通常のスマートフォン用アプリをインストールするのとあまり変わらない。
店舗側の負担も軽い。おサイフケータイやアップルペイで決済できるようにするには専用の端末を置かなくてはならないが、アリペイやウィーチャットペイを店舗で使いたい場合はQRコードの印刷された紙を置いておくだけでいい(写真)。
中国のモバイル決済の特徴について、モバイル決済ジャーナリストの鈴木淳也さんはこう話す。「中国でブームとなっているQRコード決済の特徴は、個人間送金における相手のアカウントのQRコードを読み取って指定の金額を送金するという仕組みをそのまま店舗決済へと適用した点にあります。つまり同じ送金サービスのアカウントさえあれば誰でもどんな店舗でも投資や特別な審査なしに利用できる利便性があります。これが従来の加盟店方式の電子マネーやクレジットカード決済と大きく異なります。またアリペイとウィーチャットペイの送金手数料は、個人や小規模な店舗であればほぼ無料に近く、利用のハードルが非常に低いことも挙げられます。両サービスを提供するアリババ(Ant Financial)とテンセント(Tencent)はインターネット企業であり、手数料収入よりもユーザーの行動データやマーケティングデータ収集に主眼を置いています。これが銀聯などの既存の金融サービスを展開する事業者とのビジネスモデルとの違いとなり、今回のような普及度の差になって現れているのだと考えます」