TPP、農業関係は「11」に慎重論 米抜きなら保護措置形骸化の恐れ

 米国離脱後のTPPをめぐり、残る11カ国(TPP11)での早期発効に国内の農業関係者から慎重な対応を求める声が上がっている。TPP交渉で日本が勝ち取った国内の保護措置は米国の参加を前提にしており、米国抜きでは形骸化する恐れがあるからだ。11カ国で発効しても、米国と2国間の貿易交渉を始めれば国内農業は一層の打撃を受けることにもなりかねない。

 「『米国抜きのTPP11』と『米国を戻すためのTPP11』では意味が全く異なる」

 農林水産省幹部はこう語気を強め、米国の動向を見極める必要性を強調した。

 日本はTPPで、乳製品について参加国全体で7万トンの輸入枠を設けた。牛・豚肉の輸入量が急増した際に関税を引き上げる緊急輸入制限(セーフガード)の発動条件も、米国からの輸入を前提にしたものだ。

 TPPが11カ国で発効した場合、合意内容を変更しなければ相対的に他国の輸入枠が拡大する上、米国からの輸入量を算入しない分セーフガードなどの保護措置も発動しにくくなる。

 一方、TPP11は米国に翻意を促すための揺さぶりになるとの見方もあるが、米国の復帰を拒む姿勢は強く、楽観はできない。

 農水省にとって、TPPの合意内容を変更せず早期の発効はしたものの、米国は復帰せず、2国間交渉でTPP以上の条件で市場開放を迫られるというのが最悪のシナリオだ。

 山本有二農水相は19日の会見で「安易に11カ国で発効して後から米国が戻ってくればいいというものではない」とTPP11を牽制(けんせい)した。今後交渉が進めば、国内でも農業関係者の反対意見が発効に向けた大きな壁となる可能性がある。(高木克聡)