21日閉幕したTPP閣僚会合では、11カ国が米国離脱後のTPP発効に向け本格的な検討を始めることで合意した。ハノイで具体的成果が出なければ協定の空中分解も懸念されただけに、一歩前進といえる。ただ、米国への輸出拡大を前提に参加した国が反対派を納得させるには合意内容の見直しを検討せざるを得ず、今後各論に入れば足並みの乱れを露呈する可能性がある。
「米国との橋渡しは日本が担う」。石原伸晃経済再生担当相が会合でこう“宣言”すると、米国抜きの協定発効に慎重だった国々から「よく言ってくれた」と次々と賛辞が寄せられた。
米国市場への繊維製品の輸出拡大を期待していたベトナムやマレーシアなどでは、11カ国に限定した枠組みに抵抗感が強い。また、北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉を控えたカナダなどは米国を極力刺激したくない。離脱の姿勢を崩さない米国の復帰に向け日本が「リーダーシップ」という名の矢面に立つことを期待する国は多い。
だが、11カ国は今後、協定文の見直しを含めた選択肢の検討に入る。米国が参加しなければ条件を満たせない発効規定の改訂は最低限必要だが、各国が不満をのみ込んだ“ガラス細工”の合意文書を細部まで見直し始めれば収拾が付かない。
「関税分野の変更は各国が慎重」(政府筋)というが、ルール分野は今後火種になる。ベトナムやマレーシアは米国の参加を前提に受け入れた国有企業改革や外資規制の緩和を変更するよう求める可能性があり、「21世紀型の新たな貿易ルール」と胸を張った協定の価値自体が崩れかねない。