内閣府が7日発表した2月の景気動向指数(2010年=100)は景気の現状を示す一致指数が前月比0.4ポイント上昇の115.5となり3カ月ぶりに改善した。12年12月の安倍晋三政権発足と同時に始まった景気拡大局面は51カ月となり、バブル期と並ぶ戦後3位の長さに達した。ただ消費を中心に内需は弱く、米軍によるシリアへのミサイル攻撃で地政学リスクも急速に高まっている。日本経済の回復ムードが冷え込みかねない。
「アベノミクスの成果は雇用環境と所得に顕著に表われている。多くの人が将来に希望を持ち生活できる環境づくりが肝要だ」。石原伸晃経済再生担当相は7日の記者会見で安倍政権の経済政策をこう振り返った。
2月の景気動向指数が改善したのは、自動車関連を中心に生産や出荷が上向いたためだ。基調判断は「改善を示している」と据え置いたが、景気拡大期間が「バブル景気」(1986年12月~91年2月、51カ月)に並んだ。
内閣府が正式に景気の拡大や後退を判断するときは、事後的に研究会を開き、景気動向指数を加工した指標で「山」「谷」を確定する。直近で研究会が開かれたのは2015年7月で、12年11月を「谷」と認定。翌月以降、現在まで景気拡大が続いている。
追い風となったのは大規模な金融緩和で円安・株高が進み、企業収益の向上と雇用改善が促されたことだ。足元では米国や中国への輸出が成長を引っ張る外需頼みが顕著となっている。
ただ、内需の約6割を占める個人消費は力強さを欠く。16年10~12月期の実質国内総生産(GDP)改定値の個人消費は前期比0.04%増と横ばい。今年2月の家計調査は、1世帯当たり消費支出が12カ月連続で前年を下回った。内需が弱いだけに、米トランプ政権の保護主義や、地政学リスクによる円高・株安が日本経済に打撃を与える恐れがある。「外的要因についてきめ細かくアンテナを張って注意する」(石原担当相)ほか、構造改革を進めて0.8%程度にとどまる潜在成長率を高め、経済の“体力”を強化する必要がある。(山口暢彦)