産経新聞論説委員・井伊重之
かつてにぎわいをみせていた駅前の商店街が周辺人口の減少などに伴ってシャッター通りとなり、街から活気が消えうせる。こんな光景が今、全国で広がっている。こうしたシャッター通りを生み出している大きな要因が空き家や空き地の増加である。
とくに都市部で空き地や空き家が不規則に発生して空洞化を招く「都市のスポンジ化」は、都市計画における新たな課題だ。中心市街地でも個人が相続した土地は、空き地として放置される事例が目立ち、都市基盤をスポンジのように弱体化させる恐れがある。このため、国土交通省では都市のスポンジ化を防ぐ対策づくりに着手した。これまで開発・整備段階で規制してきた都市計画制度を抜本的に見直して、将来の維持・管理段階まで一定のマネジメントを促すような仕組みを検討することにしている。
2013年の住宅・土地統計調査によると、全国の空き家は過去最多の約820万戸に達し、住宅全体の13.5%を占めた。空き家の中でも賃貸や売却用などを除いた「その他空き家」が約320万戸と5年前に比べて2割近く増加した。これは年10万戸ペースで増えた計算だ。
ここ数年、老朽化して放置されたままの空き家が社会問題化し、15年には空き家対策特別措置法が全面的に施行された。倒壊の危険や周辺の景観を損なう恐れがある空き家に対し、市町村が所有者に修繕や撤去を指導・命令できる制度だ。